« ザ・トリアエズ | メイン | 咲かせて見せますゴムの花 »

2002年03月28日

美智子の約束

わたしは国平。今年で81歳になる。
どこも悪い所はないが、ばあさんが死んで以来、さみしさが一番身に染みる。
わたしの唯一の心のよりどころだった孫の美智子からの手紙も最近はぱったりと来なくなった。
美智子に何があったのか。

おととしの正月、一人ぼっちの私に美智子は言った。

「おじいちゃんももう年なんだからね。ボケられちゃっても困るし、わたし、毎週手紙書くね。だから、おじいちゃんも返事を書かなくちゃダメだよ。約束だからね。 美智子の約束だからね。」

美智子のその言葉がほんとうにうれしかった。それ以来、私は、美智子からの手紙だけが楽しみになった。だが、それが最近、ぱったりと来なくなった。

それはそうと、今日、私は晩飯を食べたのだろうか?
「ばあさん!晩飯はまだかい!ばあさん!」
ん?ばあさん?ばあさん!!どうしたんだ!こんなみすぼらしい仏壇になってしまって!
私を残して逝ってしまうなんてひどいじゃないか!!
それにしてもみすぼらしい仏壇だ。誰がこんな仏壇を買ったんだ。まあいい。

美智子からの手紙は来ないが最近、おかしな手紙が届くようになった。
これがそうだ。

『おじいちゃん・・・。雅子です・・。おじいちゃんが私の名前を忘れてしまったのは
 本当に悲しいことです。もう、おじいちゃんから手紙をもらうことも私はできないのですか?
 年だから少しくらいボケてしまうのはしょうがないのかな・・・。でも悲しいです。
 おじいちゃんが美智子と呼んでいる人はわたしなんだよ。雅子なんだよ。おじいちゃん。
 ううん。わからなくてもいい。だからお手紙ちょうだい。待ってるよ。

 雅子』

なんとふてぶてしい女だ。勝手に私をおじいちゃん扱いしおって。私はまだ35だというのに。
それに、よりによって、自分を美智子だと勘違いしておる。なんとずうずうしいことか。
どうせわたしの遺産目当てだろう。

ん?風呂の準備ができたかな?しかし、ばあさんが死んで以来、わたしはいつも
一番風呂に入っていることになる。たまには2番風呂や3番風呂にも入ってみたいものだ。
そうだ。ばあさんに先に入ってもらえばいいんじゃないか。
「ばあさん!今日は先に風呂に入ってくれ!ばあさん!」
ん?ば・ばあさん!どうしたんだ!こんなみすぼらしい仏壇になってしまって!!
私を残して逝ってしまうなんてひどいじゃないか・・。
それにしても誰がこんなみすぼらしい仏壇を買ったんだ。
さては息子の智史の仕業だな。ん?昭夫だったか?まあいい。

美智子よ。今、一体どこで何をしてるのか。
一度でいい。一度でいいからもう一度だけお前の優しい言葉を聞かせておくれ。

投稿者 hospital : 2002年03月28日 11:59