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2002年04月28日

器用な両親

母から親父が倒れたと言う知らせが入ったのは俺が就職で東京に一人暮らしを始めるようになって3年目の夏。気丈だった父親も還暦をむかえ、幼い頃には絶対の存在であった彼も年齢と言うものにはやはり勝てず、仕事を休み駆けつけた俺を弱々しく変わり果ててしまった姿で迎えた。

「・・・父さん」
「・・・父さん」
「ごめんな、長男だって言うのに家のこと全然気にかけない駄目息子だったよ・・・
「ごめんな、長男だって言うのに家のこと全然気にかけない駄目息子だったよ・・・
「父さん、俺、しっかりとやってるから心配するなよな」
「父さん、俺、しっかりと・・・やって・・・るから心配するなよな・・ごほっ」
「馬鹿にしてるのかこのやろう!!!猿真似ばっかりしやがって!!」
「馬鹿にしてるのかこのやろう!!!猿真似ばっかりしやがって!!ごほっごほっ」
「ととと父さん!!!」
「ととと父さん!!!ごほっ、おえー」

・・・病床に伏してもなお憎たらしい父親。思えば俺が父親と折り合いが悪くなった原因の一つにこれがあったのかもしれない。幼い頃から俺が何を語りかけても父はくだらない猿真似で、俺を傷つけてきた。そう俺が話すことをオウム返ししやがるのだ。彼から俺は彼自身の言葉を聞いたことがない。しかし、今では愛情表現の一つとして受け取ることにしている。

「母さん・・、思ったより大丈夫そうだな」
「なだうそ夫丈大りよたっ思、・・んさ母」
「頼むからこんな時くらいは真剣に話をしてくれよ・・・
「・・・よれくてしを話に剣真はいらく時なんこからむ頼」
「母さん?母さん!?」
「?!んさ母?んさ母」

父さん、母さん。それでも僕はあなたたちの息子です。

投稿者 hospital : 2002年04月28日 13:15