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2002年04月28日

小西君のお弁当

小西君のお弁当箱はいつも空っぽでした。
小西君のお母さんはおっちょこちょいでいつも中身をつめ忘れてしまうのです。
でも、小西君はお母さんにそのことを言いませんでした。
小西君は本当に優しい子なのです。

毎日、お昼の時間になると、周りの友達は色とりどりのお弁当を広げ楽しいランチタイムに入ります。
そんな中、小西君はほんの少しの期待を抱いて、お弁当箱のふたをあけます。
今日も空っぽ。
小西君は窓の外を見ながら一つため息をつきます。そして心の中で思うのです。
「お母さん。今日も空っぽだったよ。でもね。僕はお母さんが大好きだよ。」

そんなある日、隣の席の芳子ちゃんが小西君の空っぽのお弁当箱を見つけました。
「あら。小西君。お弁当どうしたの?なんにも入ってないよ。」
「え?うん。でもいいんだ。」
「よくないよ。アタシのウインナーをあげるね。」
「ありがとう。よし子ちゃん。」
その日から、毎日、よし子ちゃんはお昼になるとお弁当を少しずつ分けてくれるようになりました。
でも、小西君はよし子ちゃんに悪いなと思い始め、思いきってお母さんに手紙を書くことにしました。

『お母さん。お母さん。
お母さんのお弁当毎日楽しみにしてるよ。でもね。
いつもお弁当箱の中は空っぽなんだ。お母さんに悪気がないのはわかってるよ。
でもね。お母さんがもう少し注意してくれたら、お弁当を詰め忘れることもなくなると思うんだ。
ごめんね。お母さん。明日からほんの少しだけ注意してみてね。』

小西君は手紙を書き終わるとお弁当箱の中にいれてふたを閉めました。
次の日のお昼。小西君はワクワクしながらお弁当箱のふたをあけました。
でも、今日も空っぽだったのです。でも、よく見ると手紙が入っていました。

『ごめんね。小西君。お母さん、うっかりしてた。
いつも頑張ってお弁当作ってるつもりだったのに。
今日からはしっかりお弁当詰めるからね。
今までごめんね。許してね。小西君。』

その手紙を読んだ小西君は返事の手紙を書きました。

『お母さん。お母さん。
お手紙ありがとう。すごく嬉しかったよ。
でもね。
今日はお手紙が入っていたけど、お弁当は入ってなかったよ。
お母さん、手紙を書くのに夢中になってお弁当を詰めるの忘れてしまったんだね。
でもね。僕は気にしてないよ。明日からはもう少し注意してみてね。
それとね。僕は息子だよ。小西君って呼ぶのはやめてね。』

次の日。小西君は今度こそと思ってお弁当箱をあけてみましたが、やっぱり空っぽでした。
でも、一通の手紙が入っていました。

『ごめんね。小西。
オラうっかりしてた。すんげえおめーにわりーことしてるなって自覚してるぞ。
だからな。そんなオラの不始末ゆるしてくれな。たのむから。
今日からはしっかりお弁当詰めるからな。
今日のメインはオラんちの畑で取れた人参のソテーだ。
思いっきり味わってくれな。』

その手紙を読んだ小西君はお母さんに手紙を書きました。

『お母さん、お母さん。
お手紙ありがとう。すごくうれしかったよ。
でもね。
今日もお弁当入ってなかったよ。でも、僕は気にしてないからね。明日からはもう少し気をつけてみてね。
あとね。
お母さん、自分のこと『オラ』って呼んでるよ。
お母さん都会育ちでしょ?そんな呼び方間違ってると思うよ。
あと、『オラんちの畑』ってそんなのないでしょ?
うちは団地なんだから。
でも、僕は気にしてないからね。あと、僕は息子なんだから名前で呼んでね。』

こうして小西親子の奇妙な文通はこれからも続き、結局いつまでたってもお弁当は空っぽのままでした。
唯一変わった事といったら、この春から小西君のお母さんが精神病院に入院したという事でした。

『お母さん。お母さん。
早く良くなって帰ってきてね。
お母さんのお弁当楽しみにしてるからね。』

小西君はとても優しい子なのです。

投稿者 hospital : 2002年04月28日 13:33