« ながら本舗 | メイン | 飛べる男と飛べない女 »

2002年05月28日

ズッコケ三人組2002

数々の大冒険を成し遂げた彼らのイノセンスなときは過ぎ、いまや立派な大人へと成長したハチベエ、モーチャン、ハカセの三人。高校時代から始めたスリーピースバンド、ズッコケーズとして今や都内ハードコアパンクロックシーンのちょっとした有名人です。

ここは高円寺にあるNOPOWERという名のライブハウス。
色とりどりに頭を染め、金属の装飾品をじゃらじゃらとぶら下げたナウなヤングたちが三人の愉快なライブを見ようと詰め掛けています。みんな大興奮。元気に殴りあう男の子たち。服を脱いではしゃぎまわる女の子たち。ステージの上の三人は大ハッスル。とびちる汗。ほとばしるビート。おやおや、大玉転がしのようにみんなの頭上を行き来する人までいますよ。

つるつる頭で顎に髭、ドラムを叩いているのは、すっかり筋肉ムキムキになったモーチャン。相変わらずやせっぽちで、ニワトリさんのような頭にサングラスをかけてベースを弾くのはハカセ。そして、異人さんのような金色の髪でギターを弾きながらシャウトするのはハチベエです。あらあら、随分野太い声に変わってしまったみたい。
ズッコケろ!ズッコケろ!高校中退ズッコケろ♪
ズッコケろ!ズッコケろ!カード破産でズッコケろ♪
ズッコケろ!ズッコケろ!宗教はまってズッコケろ♪
ズッコケろ!ズッコケろ!不況でリストラズッコケろ♪
ズッコケろ!ズッコケろ!シャブに溺れてズッコケろ♪
ズッコケろ!ズッコケろ!地獄にむかってズッコケろ~♪ (ズッコケ-ズのテーマ)
ハアハア・・・センキュウ!!ベイベエ!!腐れみかん野郎ども!とっととおうちに帰ってママンのオッパイにしゃぶりついてそのまま押し倒してな!ファックオフ!!

こうして彼らのライブは大盛況のうちに幕を閉じ、ここは楽屋裏。
なんだか三人ともお顔が険しいですよ。なにかあったのかしら。
「つうかさあ、ハチベエ、おめえが考えてるほど世の中甘くねえんだよ」
「あん?」
「オレバンドやめるわ。就職すっわ。いつまでもこんなことしらんねえよ」
「ちっ。やっぱ大学出は根性ねえよなあ」
ハカセは昨年8年かけてやっとこ大学を卒業したばかりです。
「なんだとお!中卒のくせに」
「るせえ。てめえみたいなインテリがパンクなんてちゃんちゃらおかしいんだよ」
「うっせえ、てめえだってブルジョアだろうがああ」
ハチベエのお父さんは3年前に八百屋さんを辞め、その土地にマンションを建てました。そして一階にコンビニを設け、ハチベエはそこの店長を任されています
取っ組み合う二人。ハカセに胸倉を掴まれたままハチベエは叫びます。
「おい、モーチャン、おまえどうすんだよ」
モーチャンはもじもじしながら答えます。
「じ、実はオレもバンド辞めようと思う・・・ユッコがこれでさ」
そういって、今は随分と引っ込んでしまったお腹の前に両手で大きな弧を描くのでした。
「おいおいまじかよ。もうすぐでメジャーと契約っていうのによお!」
ハチベエの声が楽屋に虚しく響き渡ります。

ここはハチベエのおうち。
あれからすっかり意気消沈気味のハチベエ。コンビニの仕事は全部バイト君たちにまかせ、ハチベエは毎日お部屋に閉じこもっています。やめたはずの覚醒剤にまで手を出して、自暴自棄とはこのことです。このところ食事もとらず、まったく寝ていません。うふふふ。あははは。そのとき、ついにハチベエの前に幻覚が現れました。目の前には昔のズッコケ三人組が無邪気に走り回っています。
・・・さすがハカセ!・・・モーちゃん泣くなよお・・・親友・・・
ぶつぶつと独り言をつぶやくハチベエ。もうあの頃の活発なハチベエはどこいったのでしょう。おや、そんなハチベエの前に本当に誰か立っていますよ。

「おい、おい、ハチベエってば、よお、しっかりしろよ」
「・・・やや!!ハ、ハカセ!何してきたんだよ」
「へへへ。実はさあ、ハチベエ、おれやっぱ就職なんてがらじゃなかったみたい。もう頭きちゃってさあ、上司の野郎が馬鹿すぎなんだよ。全然わかっちゃいねえ。でさ、軽くこづいてやったらクビだよ。たっくあんなケツの穴野郎どもとはやってらんねえよ」
そう言ったハカセのYシャツは真っ赤に染まっているのでした。
「ちょっともらうぜ」
そういうとハカセはハチベエの隣に座り、白い結晶を火で炙り出しました。
そこへ今度はモーちゃんがやって来ました。なにやら深刻な顔をしていますよ。
「モーチャンどうした」と、ハカセ。
「じ、実は・・・ユッコの子供ってオレの子じゃないみたいなんだ・・・」
「なんだって!!」ハチベエとハカセは同時に叫びました。
「相手はどこのどいつなんだ、モーチャン」ハカセが尋ねます。
「そ、それがNOPOWERのマスターだっていうんだよ」
「なにいいいいい!!!」
「許せん。ぶっ殺す!あの野郎。ギャラもろくに払わねえくせしやがって」
あいかわらずハチベエは短気です。すでに手にはチーマー時代からの愛用品であるバタフライナイフが握られています。
「ま、まて、ハチベエ。慌てるな。おまえポリ公に捕まりたいのか」
「うっせえ!モーちゃんをいじめる奴はオレがゆるさねえ!」
「おれだってゆるせねえさ。でもさ、もっとスマートにいこうじゃないの」
そういって怒りに震えるハチベエをハカセがなだめます。
「絶対ばれない殺人の方法をこないだ本で読んだんだよ」
「さ、さすがハカセ!」ハチベイはパチンと指をならします。
「ふ、二人ともオレのために有難う」泣き崩れるモーチャン。
「モーチャン泣くなよお」二人は優しく声をかけます。
「モーチャン、だってほら、オレたちは」とハチベエ。
「親友だろ!!!」ハカセとハチベエ一緒に。
「さあ、三人で完全犯罪に挑戦だあ!」ハチベエが叫びます。
「えいえいおー!」

三人の元気一杯なかけ声が夜空に響き渡ります。
ズッコケ三人組はいつだって仲良しなのでした。
めでたしめでたし。

投稿者 hospital : 2002年05月28日 14:07