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2002年05月28日

空回りした恋

ショックだ。幸子に嫌われた。
俺は今日、幸子との待ち合わせ場所であるハチ公前にバク転で行った。
改札を出ようとした瞬間から俺はまわり始めた。
バク転しながらどうやって切符を入れるんだ?なんて心配は無用だ。
スイカだから大丈夫だ。
とにかく俺は改札もバク転で通過し、人の群がる渋谷の町を回りつづけた。
人々は俺に興味を持って眺めていた。
俺はすさまじい勢いで回転しながら幸子に近づいていった。
幸子同様、誰かと待ち合わせをしていた渋谷の若者達は水車のごとく回りつづける俺を恐れ、ハチ公前から離れた。
そして、恐怖の顔で立ち尽くす幸子だけが残った。

幸子の目の前まで来て、俺はゆっくりと回転のスピードを緩め、止まった。
幸子は呆然と立ち尽くし、俺の顔をじっと見た。俺は悠然と尋ねた。
「待った?」
幸子は答えなかった。感動のあまり答えられないのだと思い、俺は言った。
「驚かしてゴメンな。お前にかっこいいとこ見せたくてよ。」
幸子は泣き出した。そこまで感動されるとこっちが照れる。
俺は悠然とした面持ちで幸子の肩に手をかけようとした。その瞬間。幸子は言った。
「さ・さわらないで!」
幸子は目に涙を浮かべ、悲しく、強い眼差しでもって俺の目を睨んだ。
「そんな人だと思わなかった・・・。そんな回る人だと思わなかったから付き合ったのに・・。」
「え・・・。さ・・幸子・・・。お・・・お前のためを思って・あ・・あんなに回ったんだぞ・・」
「勘違いしないでよ!!わたしがいつ回ってなんて頼んだの?悲しいよ。普通のさとし君が好きだったのに・・。」
「ご・・ごめん・・。今度からは普通に回るから許してくれ・・・。」
「ちがうもん!!普通に回るとか、変に回るとか、そういう考え方が嫌だよ!!一緒にデートして楽しくて、そういうのでいいんだから!!」
「さ・・さちこ・・。」

幸子は泣きながら行ってしまった。ハチ公の前で俺は一人立ち尽くした。
幸子に嫌われた。幸子に好かれたくて、必死に練習したバク転だったのに・・。
空を見上げ、俺は泣いた。

だが、しばらく泣いてすっきりし、
やることもないので結局バク転をしながら代官山へ向かった。
代官山に行けば、こんな俺を好いてくれる女もいるだろう。

投稿者 hospital : 2002年05月28日 14:14