« 不幸なあたし | メイン | たかお、自意識過剰 »

2002年06月28日

つっぱり落語

ご隠居:いやあ、近頃はめっきり暑くなりまして、前の席に座る女生徒のシャツに透けるぶらじゃあのヒモに、夏の到来を感じる今日このごろではございますが、炎天下の屋上で、こうして教師の目を盗んで煙草をのまなくてはならぬのは、学生風情の辛いところでございます。しかしまあ、この暑いなか、よくまあ級友らは体育などやってられますなあ。ご苦労なことで。おや、あそこにもまたあたしと同じように授業をさぼっている輩がおりますぞ。おやおや、よくみれば舎弟の熊さんじゃないか。おーい、熊さん、こっちこっち。お、気がついたみたいだな。あれあれ、なんだって熊さんのやつ、あんなに急いでいるんだろうね。

熊:はあはあはあ。ご隠居、こんなところにいたんですか。随分さがしましたよ。

ご隠居:おや、あたしに用事があったのかい。どうしたっていうんだい。

熊:へい、ご隠居にね、こらしめてもらいたい奴らがいるんですよ。

ご隠居:なんだい、やぶからぼうに。まあ、ちょいとこちらへおかけなさいよ。

熊:へい。よいしょっと。おや、ご隠居のモク、ずいぶん妙な臭いがしてますね。

ご隠居:あー、こいつはね、洋行帰りの従兄弟にもらったのだがね、まりはなといって、すこし値ははるが、異人さんたちの間じゃあめっぽう人気があるんだそうだ。

熊:ほう。あいかわらず、ハイカラですねえ。

ご隠居:いまはじめて試したのだがね、どうもこいつぁあ、あまりうまいもんじゃあないねえ。すう、すぱあ。それで熊さんや、いったいなにがあったっていうんだい。

熊:へい。実はですね、先日、ハチの野郎と隣町の玉突き場に行ったんですよ。行ってはみたものの、どうも二人ともやり方がわからねえ。仕方がねえってんで、見よう見まねで、棒っきれで玉をつついたり、穴に玉をいれてみたりしておったわけなんですが、そのうちに退屈してきましてね、そこの店員ってのがまたマブいスケだったものですから、いっちょうからかってやろうと、二人でズボンとパンツを脱いでてめえの棒と玉を

ご隠居:ちょいとやめておくれよ、まったく、おまえたちは、どうしようもないあほうだねえ。あたしゃ、あきれたよ。

熊:へい。お恥ずかしいことです。なにせ学がねえもんで。

ご隠居:お前さんたちのほかに客はいなかったのかい。

熊:へい、それがね、人相の悪い二人組があっしらのほうをジロジロみてやがりましてね。

ご隠居:そりゃあ、熊さん、そんなもの誰だってジロジロみちまうだろうよ。

熊:あっし、なんだかカチンときちゃいましてね。そいつらのとこにいってこう啖呵きってやったんですよ、おい、てめえら、なんか文句あんのかこら。殺すぞ。

ご隠居:こりゃまた、熊さん、いきなり物騒なことを言うねえ。

熊:へい。したら、奴さんこういうじゃねえっすか、あんだこら、おめえらみかけねえ顔だなあ、ガッコどこだこら。あっしも親切に教えてあげたんですよ。寿限無だこら。てめら、ジュゲ高の熊公ハチ公ってのを知ってて口きいてんのかこら。

ご隠居:ほほう。ずいぶん威勢がいいねえ。

熊:するとね、破廉恥な色に頭を染めた野郎が、おう、知ってるよ、ジュゲ高つったらご隠居ってのがしめてっとこだべ。それでその腰ぎんちゃくで有名な熊公とハチ公ってのがおめえらってわけか。がははは。と、こう言うんですよ。隣にいた坊主頭もね、噂どおりのトンマだとか抜かしまして、あっしも短気なほうでやんすから、かーっときちまいまして、気がついたら、そのお祭り頭の方を持っていたメリケンサックでかち割ってたんでさあ。

ご隠居:これこれ、熊さん、あいかわらず辛抱がたりないねえ。

熊:しかし、ご隠居、腰ぎんちゃく呼ばわりですよ、あたしゃせめて、縁起よく小判ザメと呼んでほしかった。

ご隠居:何を言ってるんだか。

熊:それをみていたハチのやつもね、持っていた玉突きの棒でハゲ頭を滅多うちですよ。

ご隠居:はっつぁんも相変わらず恐ろしい男だねえ。

熊:へい。ハチがいうにはね、どうもそのハゲ頭がオバQにみえたっていうんでさあ。オバQにトンマといわれる筋合いはねえってんで、かんしゃくをおこしちまったてわけです。

ご隠居:あれまあ、はっつぁん、アンパンのやりすぎと違うかね。

熊:すると、その店員のネ-チャンがいらんことに、マッポに連絡したとのたまわりましてね、殴り続けるハチを連れて一目散に逃げてきたってわけですよ。

ご隠居:ほうほう、そりゃあ危ないとこだったねえ。いまお上に捕まったんじゃあ、おまえさんたち、また留年しちまうからねえ。

熊:へい、それがですね、運の悪いことに、ハチの間抜けめ、ズボンをはくのを忘れてましてね。そのズボンにね、財布やら定期やら学生証やらがはいっておったわけですよ。

ご隠居:おやまあ、それじゃあお上にばれてしまうじゃないかい。

熊:へい、ハチといつマッポから呼び出しが来るかびくびくしてここんとこ過ごしてたんですがね、昨日ハチのとこにかかってきた電話ってのが、例の二人組からだったんですよ。なんでもね、ハチの持ち物は全部預かっている、マッポにチクられたくなかったら、隣町の廃工場に来い、とこういうわけですよ。しかもね、どうもハチがいうには、電話口のまわりにゃあ何人も悪そうなのがいたようでね。こりゃあこっぴどく仕返しをされるにきまってまさあ。そこでね、どうも二人じゃ心細いんで、ご隠居の力をお借りしたくて・・・ん、ご隠居、どうしたました。ぼけっとしちゃって。ちょっと、ご隠居、きいてるんですか。ご隠居!

ご隠居:く、熊さん、どうもあたしゃあ、さっきから具合がおかしいみたいだよ。なんだか体が重くって。頭もぼうっとしちまってねえ。まりはなのせいかしらん。熊さん、悪いがあたしゃあ、もううちに帰ることにするよ。

熊:え、フケるんですか。一緒に来てもらえないんですか。かわいい舎弟がどうなってもいいっていうんですか。ご隠居、そいつぁあ薄情ってもんじゃあねんですかね。

ご隠居:これこれ人聞きの悪いことをいうんじゃないよ。いいかい、熊さん、売られた喧嘩は自分で買えといってね、人に頼っちゃあいけえねえよ。それからね、昔からね、ケリはタイマンって決まっていてね、相手方もそんなこたあ重々承知でしょうよ。よってたかっておまえさん達を殴る蹴るってこたあないんだよ。それが粋なツッパリ道ってえもんですよ。

熊:へい。そんなもんですかねえ。わかりやした。ご隠居がそういうなら、あっしらでなんとかしてみます。

ご隠居:うむ。しっかりタイマンはってくるんだよ。

熊:じゃあ、ハチのやつを校門で待たせてあるんで、ちょっくら行ってきます。

ご隠居:ちょっと、熊さん、いいかい、どんなことがあっても、ジュゲ高の名に傷がつくような半端なことをするんじゃないよ。おい、きいているのかい。あーあ、いっちまったよ。

(3時間後)

ご隠居:ふう。ようやく気分がなおってきましたぞ。しかし、熊さんにああはいったものの、どう考えてもあの二人、リンチされてるに決まってらあね。まあ自業自得なんでしょうが、ちょいと心配になってきたねえ。どおれ、隣町まで単車を飛ばして様子を見に行こう。

ぶううん。ぶうんぶうんぶううううん。ききっー。(バイクの音)

ご隠居:おーい、熊さん、はっつぁん、大丈夫かい。

熊:やー、ご隠居、売られた喧嘩を買ってきましたよ。

ご隠居:そうかいそうかい、それでこそあたしの舎弟分だよ。ん、しかし、お前さんたち、見たところ全く無傷じゃないか。

熊:へい。ちょろいもんですよ。

ご隠居:見事なもんだねえ。それで、ケリはついたんだね。

熊:へい。ご隠居のいったとおり、大枚はたいてケリつけやした。

おあとがよろしいようで。

投稿者 hospital : 2002年06月28日 14:40