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2002年07月28日

桃子の失敗

「桃子。行きまーす!!」

陸上部の桃子は猛スピードで砂場に向かって走り出した。桃子は走り幅跳びの選手だ。
桃子は右足で思いっきり踏みきってジャンプした。
すると前に突き出た両足のヒザが審査員の顎に見事にヒットした!
優しい桃子はその瞬間、大きなショックを受けた。
アタシ・・審査員のおじさんに膝蹴りしちゃった・・・。桃子は着地までのコンマ何秒かのあいだに色々考えた。

(あのおじさんに奥さんがいるとして・・・・もしかして今日結婚記念日かもしれない・・・。
そしたら、奥さんはすごいおいしそうなごちそうを作って、おじさんを家で待ってるんだろうな・・・。
でも、アタシの膝蹴りのせいであのおじさんが歯を痛めてたとしたら、奥さんの心のこもった
大切な料理を食べられないじゃない!どうしよう・・・。桃子・・・そんなつもりじゃなかったのに・・・。
それにそれに・・・・もしかしたらあのおじさんには子供がいてその子供は今、ちょうど歯が生え変わる時期なのよ。
子供の前歯が今日抜けたとしたら・・・・私の膝蹴りのせいで前歯をなくしちゃったかもしれないおじさんは
子供に馬鹿にされるわ!「パパも前歯がないね。」って。それでそれでお父さんとしての威厳を
失うことになっちゃったらどうしよう・・・。あたし・・あたし・・・。そんなつもりじゃなかったのに・・・。それでそれで・・・)

そんなことを考えているうちに桃子は砂場に無事に着地した。桃子は急いで審査員のおじさんの方を振り返ろうとした。
しかし、優しくて気の弱い桃子は着地からおじさんの方を振り返るまでのコンマ何秒かのあいだに色々考えた。

(たぶん。大丈夫よ。だって膝蹴りって言ったって、女の子の力じゃない。顎を砕いちゃうなんて・・・
そんなの・・絶対無理!無理だもん!でも・・・・もし・・振り返った瞬間・・・・おじさんが血を流して苦しんでいたら・・・・。
あ!それどころか失神していたらどうしよう!!息止まってるかも・・・。しかも、だれもそのことに
気がついてないの!そしたら人工呼吸しなくちゃいけないかも・・・ううん!あたしがやったことだもん。
絶対しなくちゃいけないわ・・・。でも・・・アタシ息が臭かったらどうしよう・・・・・。おじさんが生き返っても
あとで「あの子は息が臭い。」なんて言われたらアタシ生きていけないよ・・・・。殺しちゃお・・・。)

色々考えたあげく、桃子はそう結論を出し、着地すると同時におじさんに向かってダッシュ!!
もう一度膝蹴りを食らわせた。

優しい桃子なりに一生懸命考えた結果だったが、端から見ていると、桃子が審査員のおじさんに思いっきり膝蹴りを二回食らわせたようにしか見えなかった。
結局、おじさんは顎を骨折し入院。桃子は退部処分となった。

桃子は優しくて気が弱かっただけなのに。

投稿者 hospital : 2002年07月28日 14:53