« ファイティング斉藤 | メイン | 東京 »

2002年07月28日

住職

 これから私と妻よしみの出産における体験を記す。

 苦しい陣痛をよしみは乗り越え、産婦人科医によって、我が息子はとりあげられた。

「おぎゃーーーっ。おぎゃーーーっ。」
「おめでとうございますっ。元気な男の子ですよ」

 めでたい出産の瞬間である。もちろん我が子は産声をあげたのであるが、変化はこの次にあらわれた。

「・・・おぎゃーーーっ。おぎゃーーーっ・・・・。しくしくしく・・・」

 普通に泣きはじめたのである。泣かない赤ん坊は危険であるというのはよく知られていることだが、このような泣き方は医者を初め、その場に居合わせたものにとっては始めての経験だった。しかし異変はこれだけではなかった。

「・・・・しくしく・・しくしく・・・・・・まじむかつく・・・」

 まるで赤ん坊とは思えない。生まれてすぐにその子は感情をあらわにして、泣き出していたというのだ。悔し泣きだったのだ。

 そしてさらに・・・。よく見ると髪の毛がどんどん黒くなっていくではないか。従来、赤ん坊の頭にはうぶ毛くらいしか生えていないはずだ。しかし、我が子はすくすくと頭髪を生やし始めたのだった。ふとみると赤子を取り上げて抱きかかえていた看護婦の顔に陰りがさした。

「・・・な、なに・・?お、重くなってるの?」

 その時その場にいた我々は確実な異変に気づいた。どうやら赤ん坊はありえないスピードで成長をしているようだった。重さに耐え切れなくなったその看護婦はたまらず赤ん坊を腕から落とした。ありえないことではあるが、一同はその瞬間を目撃した。

「たっ・・・立っている。」

 赤ん坊はそのまますくすくと身長を伸ばした。いや、もうすでに赤ん坊とは呼べないだろう。小学校にそろそろ入学しそうなくらいに身長が・・・・と思ったのもつかの間、顔にはにきびができはじめた。

「おやじぃ~!大っ嫌いだ!」

 嫌われるいわれの無い私だが、これは・・・ひょっとすると反抗期・・・・。もう、その速すぎる成長を受け入れるとか、そんな問題ではなくなっていた。一同はただただ見守るしかなかった。

 産声をあげてから一時間もたたないうちに、その生涯を終えた息子を私とよしみは呆然とみているしかできなかった。あっという間の人生劇を見せられた我々は息子が最後に残した言葉を頭の中で繰り返しながら、ただ呆然としていたのだった。


 最近の子は成長が早いのだ。

投稿者 hospital : 2002年07月28日 14:55