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2002年08月28日

勝ち組の男

信号が赤に変わった。

その時、道路の反対側に立っていた男と目が合った。
俺はいつも人と目が合うと、相手が目を離すまで絶対に目を離さないことにしている。
今日もそのつもりだった。
しかしそいつはいつまでたっても目を離そうとはしなかった。

俺はだんだんそわそわし始めた。
少しでも恐そうに見えるように、手をジーパンのポケットに突っ込み斜に構えてみた。
それでもその男は目を離そうとしない。
俺がそわそわし始めると、今度は相手が反撃に出た。

そいつはさっきから煙草を吸っていたが、
火種がフィルターを燃やし、指寸前にまで迫っているのに煙草を離そうとはしなかった。
熱そうなしぐさすら見せなかった。
明らかに俺をびびらせるための演出だ。
しかし、俺はそいつのそのしぐさに少しびびってしまった。
目を背けたい衝動。

俺は今にもそいつから目を離しそうだった。しかしこらえた。
今までがんばってきたじゃないか。こんな所で負けてたまるか。
なんとかその衝動を押さえ、そいつの目を見据えた。大丈夫。ここから反撃だ。

俺はいきなり隣に立っていた買い物帰りのおばさんの胸に手をあてた。
横断歩道で隣になった見知らぬおばさんの胸をいきなり触る男はそうそういるもんじゃない。

これにはさすがに相手もびびったようで少したじろいだように見えた。
しかし、もっとびびったのはおばさんの方でいきなりビンタを食らわしてきた。
俺は見事に食らってしまった。
予期せぬ所に伏兵がいた。このおばさんもあの男の仲間か。
今まで勝ちつづけてきた俺を、ついに組織ぐるみで倒しに来たのだ。
ここで負けたらヤツラの思い通りになってしまう。

俺は痛みに耐え、男の目を見続けた。
相手もこのおばさんとの連携攻撃で勝てると思っていたらしく、予定が崩れた事に少し動揺しているようだ。

この勝負。勝てる。

ここが勝負所だと悟った俺は、一気にズボンをおろした。
昼間の都心の道路でのフルチンにびびらない奴はいない。
絶対に目を離すはずだ。

その瞬間だ。

近くにいた警官に後ろから羽交い締めにされた。
なんてこった。警官までもがあの男の仲間だったか。
相手の巧妙な作戦に俺は舌を巻いた。

そうこうしているうちに信号が青に変わり、男は横断歩道を渡り、俺の横を薄ら笑いで通りすぎた。
畜生。でも、俺はそれでも目を離さなかった。最後まで目を離さなかったのは俺のほうだ。
俺は勝ったんだ。
その後、交番に連れて行かれ、事情を説明したが、わかってもらえなかった。
2時間も取調べをされたが、当然、取調べの最中も俺は警官から目を離さなかった。

今日も勝ちつづけた。
すばらしい人生だ。

投稿者 hospital : 2002年08月28日 15:42