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2002年08月29日

アイパーマミ

 僕の家族はみな超能力者で、父によるとその伝統は古来から受け継がれてきたものなのだそうだ。15の歳を迎えると必ずその超能力は現れる。姉は15になったとき突然スプーンを曲げるようになった。父はものに触れることなく動かすことができる。母親はテレパシーを使える。突然心に話しかけられることがある。子供の頃、僕の超能力は一体なんだろうと胸をときめかせていたものだった。

 15歳の誕生日、突然僕の髪の毛にきついアイパーがあてられた。父に言わせると、アイパーという能力なのだそうだ。そのまんまじゃないかと思春期の僕はひどく落ち込んだものだ。アイパーのエスパーなんてまるで冗談のようだからだ。15歳でアイパーは結構つらかった。他の家族はみなエスパーらしい能力を持っているというのに、僕といえばアイパーだ。その日から学校でいじめられるようになった。先生にも「パーマは禁止だ」とどやされた。家族にこの苦しさを分かってもらおうとしても、「お前は超能力者なんだ。自覚と誇りを持ちなさい。」といわれるだけ、アイパーで一体なにをしろというんだろう、とそんなことばかり考えて生活をしていたものだから、当然のごとくそんな僕はすさんでいった。

 18歳、僕はとても暗い男になっていた。「アイパーが暗くてどうする。アイパーの自覚を持て。」と父は口癖のように僕を慰めてくれたのだが、それを言うなら「エスパーが暗くてどうする。」だろう。父親でさえ僕がエスパーだということを完全に忘れてしまっていた。エスパーになるはずだったのにアイパーになってしまった僕は親戚中の笑いものだったのかもしれない。

 ある朝僕のアイパーに変化がおきた。突然、パンチパーマになっていたのだった。父に言わせれば我が家始まって以来の特殊な例なのだそうだ。いったん生まれたエスパーの能力はその後変化をおきることが無いというのだった。父は喜んだ。家族をあげて僕のことを山下家始まって以来の天才だと誉めそやした。今思えばそれは慰めていたのかもしれない。その時はなんだかうれしかったがアイパーがパンチに変化しただけなのだった。

 自分の運命に絶望し、自暴自棄になった。酒とシンナーに溺れた青春時代を過ごした。暴力団の手伝いのような事もした。いつしか僕には頼れるものがなくなっていた。超能力の家族に生まれ、僕だけがエスパーではなくアイパーだった少年時代。いつしかそれはパンチパーマになって、今では世間からチンピラというレッテルを貼られている。そして、パンチパーマはまた元通りアイパーに戻っている・・・。

 エスパーのなれの果てがチンピラか・・・。父さんの言ったとおりどんな能力でも誇りと自覚をもっていればよかったのかもしれない。そんな俺でもいいと言ってくれた女がいる。マミだ。マミには感謝している。今年の10月に結婚することになった。

 マミ・・・ごめんね・・・・・。僕にはわかる・・・・。お前、きっと・・・『アイパーマミ』と世間から笑いものにされるぞ・・・。それだけは分かるんだ。それでも良いんだな・・・。ありがとう、マミ。お前に感謝している。

 マミよ。エスパーの孤独を理解してくれるもの、お前以外にいない。ありがとう、マミ。

投稿者 hospital : 2002年08月29日 09:26