« テトリスな男たち | メイン | 合格体験記 »

2002年09月29日

憎いあんちくしょう

あいつが憎い。たまらなく憎い。
あんまり憎いので、斧で頭をかちわってやった。

あいつは泣きながら、すみませんでした、許してくださいやすし様と、
俺の名前に様付けをして謝った。
しかし、おれは許さなかった。
かちわった頭からみえる脳みそに、さらに唐辛子をすりこんでやった。
あいつは手をバタバタとニワトリのようにして俺の周りを駆け回り、
そして玩具のゼンマイが切れたみたいに、ぽっくりと死んでしまった。
わははは。さまあみろ。
というのは全部俺の妄想だ。
そんなことをしたら警察に捕まっちまう。
あいつのせいで人生を棒にふりたくはないんだ。
それにあいつを殺してしまうほど俺も非道いやつじゃない。
しかしまあ、こんな妄想にふけってしまうくらい憎いのは事実だ。
ああ憎い。ぶっちゃけまじでかなりだいぶめちゃくちゃ憎い。
ウルトラスーパーデラックス憎い。のっぴきならないくらい憎い。いと憎し。
そんなに憎いなら関係を絶てばいいと思うかもしれないが、
そんなことが出来るならばとっくにやっている。
どうしたわけか、俺がどんなにあいつを拒もうが、
あいつはいつも俺のそばに居て、俺の逆鱗に触れることばかりしやがるんだ。
そしてこれからも手をかえ品をかえオレに嫌がらせを続けるのだろう。
あんなやつと出会ってしまったことに、俺は自分の運命をも憎む。
そして、そんな運命から逃れるために俺は死のうと思った。
いま目の前には、たぶん飲んだら死にそうな洗剤がある。
たぶん飲んだら死にそうな洗剤なので、本当に死ねるかどうかはわからない。
わからないが、やってみなくちゃわからない。
ええい、ままよとばかりに俺はそいつをひと思いに飲み込んだ。
うわ。まずい。なにこれ最悪。
そしてくるしい。ごほごほ。おれは血を吐きながらのたうちまわった。
薄れゆく意識の中で気がついた。
しまった。遺書を書くのを忘れた。これじゃあ自殺の原因がわからない。
というか自殺なのかどうかも疑わしい。
俺が故意にではなく間違って死にそうな洗剤を飲んでしまったと思われたら実に遺憾だし、
それをあいつは馬鹿でえといつも俺がドジをしたときにそうするように、
きゃっきゃきゃっきゃと飛び回って喜ぶかもしれない。
あわてて俺は自分の血反吐で、畳にあいつの名前を書きなぐってやった。
た・か・し、と。ふう。
これで俺の自殺はあいつのせいだ。一生それを背負って生きやがれ。
いや、ともすれば、他殺と捉えられ、あいつが犯人と思われるかもしれない。
はっはっは。これであいつの人生は滅茶苦茶だ。
しかし、名前を書いただけで大丈夫かしらん。
さらに俺は最後の力をふりしぼって、言葉を足した。
たかしめ、と。
「め」が俺のあいつへの憎しみを表現する。
けけけ。さまあみろ。
と、そのとき、思わぬことに手がずるりとすべり、
たかしめ、の後に「し」みたいな血文字ができてしまった。
あちゃあ。たかしめしってなんだよそれえ。きゅーばたん。
そして俺は死んだ。
というのも全て俺の妄想だ。
あんなやつのために死ぬなんて馬鹿馬鹿しいし、
そこまでやるほどの問題じゃあないんだ。
俺はあいつに気づいて欲しいだけなんだ。
あいつがどれだけ俺を悩ませているのか。
そしてそのための償いを受け、俺に謝って欲しい。
きちんと謝ってくれれば俺も許すだろう。
そんな寛大な俺にあいつは心打たれ、反省し、俺への悪事を止めるだろう。
それからは敬意を持って俺に接し、俺もあいつに優しい気持ちでいられるだろう。
そのために、俺はどうしたらいいのか。その方法を俺は知っている。
権力に訴える。権力は俺の主張を聞き入れ、正当な判断をもってあいつを罰するだろう。
制裁を受けたあいつは己の愚かさと俺にしてしまった悪事の重大性に気づき、
反省と謝罪の意を表明するであろう。そこから俺たちの新しい関係が生まれるはずだ。
常日頃から俺は、あいつのことを憎んではいたものの、
もっといい関係でありたいと、そう願っていたんだ。
これはあいつと俺の未来のために避けては通れない必要な行為なんだ。
こうして俺は権力を前にあいつの悪事をぶちまけてやった。

お母さん、お兄ちゃんが僕のプリン食べたあ。
こらっ、たかし。やすしに謝りなさい。

頭にたんこぶを作ったあいつは泣きながら俺に謝った。
ふん。ざまあみろ。もうやるんじゃねえぞ。

投稿者 hospital : 2002年09月29日 09:46