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2002年11月01日

バルサン

学生時代からの親友が俺の部屋に上がりこんできた。

「バルサンたくから。」

いきなりの宣言だった。奴は窓を勝手にしめ、鍵を針金で固定した。
彼の持っている買い物袋にはバルサンが合計16個。
ガムテープで隙間を手際よくふさいでいく。
俺の部屋は6畳。

「全部たくから。」

迷惑な宣言だった。
一つ、二つ、三つ・・・・。
気が遠くなってきた。バルサンの白い煙はもくもくとこの部屋を包み込む。

「天使の住む天空の世界みたいで素敵だろ?」

言いたい事はわかるが、こいつは一体何をしたいっていうのだろう。
十個、十一、十二・・・・。
とうとう、十六個全てのバルサンがセットされたようだ。
もう部屋中まっしろで視界がまったくきかない。
意識が朦朧としてきた。

「じゃ、俺行くから。」

他人の家で勝手なことをしておいて、アイツは立ち去るというのか。
俺はそれを咎めようとして、気力を振り絞って立ち上がったその時。
やにわにドデカイゴキブリがドスンと床に転げ落ちた。

なんだこれは・・・。
よくみるとそのゴキブリの傍らには手紙が置いてある。
窓をぶち破り、換気をしてから、やっとのことでその手紙を読むことができた。


「俺、実はゴキブリだったんだ。」


手紙には彼の筆跡でそう書かれていた。
学生時代ともに夢を語ったあいつはゴキブリだったというのだ。

・・・・・。

まったくもって謎である。

投稿者 hospital : 2002年11月01日 14:54