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2002年11月13日

都市伝説

都市伝説といえばいいのか。
『のっぺらぼう』と言うのがいる。
俺の弟のことだ。

5歳のとき、弟が出来ると言うことで母の出産を楽しみにしていたのだが
弟が生まれた瞬間母はもとより、一家全員ひいた。超ひいた。
顔がないのである。カオナシなのである。
正直、『千と千尋の神隠し』は笑えなかった。というか、笑えるとかじゃないかもしれない。だって、顔が無いからだ。

顔の無い弟。
流石にぐれた。相当にぐれた。
当然の結果だろう。顔が無いのである。
『千と千尋』のブレイクにより、勿論弟は『カオナシ』と呼ばれた。
中学校、高校と教師には

『お前は表情がわからん!』

と、よく殴られたそうだ。
本人は笑っていたらしい。まあ、殴られて当然か。

それはともかく、実際のっぺらぼうを弟に持つとつらい。
何をするにも、何を頼むにも気を使ってしまうのだ。
この間食事中に醤油注しを取って貰おうとした時、弟の表情が読めなかったので

『怒ってる?』

と、聞いてみた。
泣いていたそうだ。本当にすまん、と謝ったくらいだ。

この間、そんな弟にもなぜか彼女ができた。

『雲を掴むように分からない人』

なところがいいのだそうだ。女心って不思議だ。
しかし、そんな彼女も付き合って1ヶ月目には耐えられなくなったようで、結局彼女からの連絡は途絶えてしまった。
そんな時でも平静を保っているように見えたので弟にどんな気分か尋ねてみた。

『べつに落ち込んでないのか?』

かなり辛かったようで、返事がなかった。表情が分からないのはとにかく困ったものである。
弟にとって初めての恋に相当入れ込んでいたみたいで、その後弟の不審な行動が目立った。

ストーカーを始めたのだそうだ。
例の女の子の姉と言う人から俺は相談を受けたのだった。
その子ものっぺらぼうにストーカーをされてさぞかし苦痛だったろう。
しかし、弟は止まらなかった。
結局弟は事件を起こした。その子の家に不法侵入をしたところを近所の人に見つかったのだそうだ。
見つけた人もさぞかしひいただろう。なにしろのっぺらぼうなのだから。

結局弟は精神的に歪んでしまってさまざまな事件を起こし、身を追われる立場になった。
弟よ、今はどこで身を潜めているのだろう。
よく交番の前で弟の似顔絵を見かけるのだが、そのたびに思うことがある。

『よく描けている。』

誰でも描けるか・・・。
自嘲気味に呟き、俺は都会の喧騒の中へと消えていく。

投稿者 hospital : 2002年11月13日 15:05