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2002年12月14日

どっちやねん

山本君」
「はい」
「明日までに急ぎでこの書類に目を通しておいてもらえるかな、あんまり急がなくていいから、来週までに頼む。なんなら来年でもいいけどな」
「は・・・はい」
「ゆっくりでもいいから、よろしくたのむぞ。年末は忙しい時期だから大変だけどな」
「え・・・ええ」
「じゃ、明日までに大至急頼むな、いそがなくていいぞ」


部長は時々わからないことを言う。普段はとても紳士的な人なのだが、突然わけのわからないことを言い出すのだ。部下はそんな時唖然とする。

「木元君、例のプロジェクトのほうは順調かね」
「はい、用地買収で地元住民とのトラブルがすこしありますが、おおかた順調といえます」
「そうか、がんばりたまえ。君は我が社の穀潰しだ」
「え?」
「そのプロジェクト、成功を祈るよ。君には死んでもらいたいと思ってる」
「・・・ありがとうございます・・・」


なにが言いたいのかわからないが、とりあえず表情から察するに部長は部下を励ましているようだ。そんな部長の仕事ぶりはまさに馬車馬のようで、突如として噴出するハテナな発言をのぞけば我が社の鏡といえる。そんな部長には部下達も尊敬を惜しまない。

先ほどまで自分のデスクで馬車馬のように書類に目を通していた部長が俺のところへやってきた。


「安田君。コーヒーは好きかね」
「は・・・はい・・・、飲みますが」
「わしは、好きだ。来週までにコーヒーが好きだ」
「?」
「好きだ、頼む」


そう言うと部長はまた自分のデスクに戻り、馬車馬のように仕事をはじめるのだった。人間誰しも欠点というものがあるが、部長の場合普段の仕事ぶりに非の打ち所がないため、仕事以外のところで欠陥がでてしまうのかもしれない。


「わしは馬車馬だー」


叫びながら仕事を続けている。そんな部長には誰も話しかけられない。そして、誰もどっちやねんとつっこみを入れることができない。ただただ部長の飛び抜けた人間性に目を見張ることしかできないのだ。


「わしは馬車馬じゃないーー」


どっちやねんと思ってしまうこともある。しかし部長は相変わらず仕事に集中している。先ほど私にわけのわからない質問をした部長だがふと顔を上げると、私の方へ向かって


「安田くん。わしはなー、実はコーヒーが飲めないんだー。コーラが好きだー」


どっちやねん。

投稿者 hospital : 2002年12月14日 15:18