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2002年12月05日

顔に書いてある

どうも、近頃、妻の様子がおかしい。
つい先日までは、夜遅く帰ると

「あなた。若い子と遊んでたって顔に書いてあるわよ!」

などと冗談半分に、色々と詮索されたというのに、
最近は、何時に帰っても何も言って来ない。
俺はなんだか落ちつかなくて妻に聞いてみることにした。

「なあ。なんで最近、遅く帰ってきても何も言わないの?俺に興味なくなった?」

妻は俺の顔をちらっと見ると、突然、ポケットからマジックを取り出して、

(ごめん。アタシ。スーパーで働いてるでしょ。最近入ったアルバイトの大学生と浮気してるの。)

と顔に書き始めた。

そして書き終わると、無表情で俺の方を見て、

「そんなことないわよ。」

と言った。しかし、どう考えても、妻の顔には(浮気してる。)と書いてある。
実際に書いてあるのだ。
しかし、顔には書いてあるものの、妻は本気でしらばっくれようとしている。
俺は訳がわからなくなって

「そ・そうか・・。ごめんな。変なこと聞いて・。風呂入ってくる。」

と言った。妻はそれを聞くと、ポケットからティッシュを取り出して顔をこすり始め、
さっきの浮気宣言を消すと、次は
(ごめんね。別にあなたを嫌いになったわけじゃないんだけど。)
と書いた。そして書き終わると、無表情で俺のほうを見て、

「変な人ね。さっさとお風呂入ってらっしゃい。」

と言った。『お前、顔にごめんって書いてあるぞ。』と喉まで出かかったが、
言えなかった。ここまで正々堂々、書かれると逆に言えないものだ。


というわけで、俺達夫婦の妙な生活がこの日から始まった。妻は

「ちょっと買い物に行って来る。6時間位したら帰ってくるね。」

と夜の11時に出かけていくようになった。
もちろん、顔にしっかりと、(今から浮気してきます。)と書いて出かけて行く。
俺はそれに対して、

「そ・・そうか・・。気をつけてね・・。」

としか言えなかった。でも、ある日のことだ。
妻はその日も夜中の2時に、男から電話がかかってきたようで、急に着替え始め、

「お隣の山田さんの奥さんが大根くれるって言うから行ってくる。あさってのお昼頃帰ってくるね。」

と、顔には(例の大学生の男と温泉旅行へ行ってきます。)と書きながら言った。
俺はもう何も言えなかった。しかし、妻の顔をよく見てみると口元に小さく、
(本当は止めて欲しいのよ・・。)
と書いてあった。俺は急いでマジックを探し、顔に
(今までごめんな。これからは俺も浮気したりしない。お前に浮気されて気付いたんだ。だから、帰ってきてくれ。おまえのことが好きだ。)
と書き殴った。
そして、妻の顔をじっとみつめ、

「行ってらっしゃい。」

と言った。妻は目に涙を浮かべ、ポケットからティッシュを取り出し、
さっきの温泉旅行宣言を消すと、上から、
(ありがとう。そう言ってくれるの待ってた。これで最後にする。しっかり終わりにしてくるから。)
と書いた。そして何食わぬ顔で、

「じゃあ行ってきます。」

と言った。その後、妻はその男と別れたようで俺達夫婦にも平和が戻ってきた。

例の、顔にマジックで書く会話もやめた。
ある日、妻が
(しゃべった方が早くない?)
と顔に書いたのがきっかけだ。(その通りだ。)と心から思った。

そう言うわけで、俺達夫婦は結婚して10年かかってようやく心を割って話せるようになった。
ちなみに、俺は今日、リストラにあった。でも大丈夫。
正直に妻に言えばいいんだ。そして、ふたりで乗り切ればいいんだ。

俺は家に帰って、正々堂々

「おう。今日な。リストラされたよ。」

と言った。妻は笑いながら、

「離婚しましょう。妊娠したの。あなたの子じゃないわ。」

と言った。

俺は妻の言葉が信じられなくて、
妻の顔に何か書いてないかと、必死になって探したが、何も書いてなかった。

俺は自分の部屋に戻り、引き出しから油性マジックを取り出すと、
顔に(超悲惨。五里霧中。)と書き殴り、眠りについた。

投稿者 hospital : 2002年12月05日 15:14