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2003年02月09日

納得

栄子は憤慨しながら走っていた。

気を晴らすために、ドーナツを食べながら走ったので、息苦しい。でも、お腹がすいているから仕方ない。そう、納得しながら、全力疾走でにぎやかな商店街を一目散で走り続けていたのだった。


右手で綱をひっぱっている。飼い犬のチャッピーの散歩だ。
栄子はわがままな女だから、散歩といえど全力で走ることに決めている。

「なにが散歩だ、馬鹿馬鹿しい。私は走る」

そう言っては家族たちを困らせていた。
栄子が犬小屋に迎えに行くと、チャッピーはあからさまに嫌な顔をする。そんな時栄子はチャッピーのわき腹を思い切りけりあげるのだ。

「なによ、犬の癖に」

虫の息のチャッピーを引きずるようにして、散歩がはじまる。もちろん、全力でだ。
散歩と言うより殆ど罰ゲームといっていいだろう。
全力疾走する女にひきずられている血みどろのその物体を、誰も犬だとは思わない。
まるで罪人の市中引き回しだ。

ある交差点にくると、栄子ははたと立ち止まった。なにやら右手が重く感じられたからだ。
さてはチャッピーが地面に踏ん張って飼い主である私に反抗をしているのだろう。
ふと、犬のほうを見遣ると、そこにはあぐらをかいたみのもんたが、いかにも説教をしたそうな顔をして鎮座していた。

しかし栄子はさらに右手に力を込めて走りだした。
そいや、そいや、そいやっ。
みのもんた?だからなに?

「いたたたたた、奥さん、止まりなさいよ」

私は奥さんじゃない。私は奥さんじゃない。
栄子は止まらない。栄子はいつだって走っていなくてはならない。
チャッピーがみのもんたになっていることを完全に納得した。
だから走るのである。

栄子はいつだって、納得するのである。
栄子はムテキだ。

投稿者 hospital : 2003年02月09日 08:15