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2003年03月31日

理想の男性像

女性雑誌とテレビのワイドショーが全ての妻、美恵子。
彼女はことあるごとに、それらの話題を引き合いに出す。

「あたし、夫に求める条件は『示唆に富む』だわ」

こんなことを言い出す。
きっと理想の男性像のアンケート集計結果か何かをそのまま俺に当てはめようとしているのだろう。

「だから、あなた、示唆に富め」

命令口調でこんなことを言われても困る。
そもそも、示唆に富もうぜ!とか、そういったものではないだろう。

美恵子は本当に可愛い女だが、突然のこのような言動に閉口することばかりだ。

「あなた、世論に訴えてよ」

こんなことを期待されて夫はどうすれば良いと言うのだろう。
何の影響なのだ。多分イラク問題と理想の男性像を混同しているのかもしれない。
まあ、よい。ほおっておこう。
こんなこと全てにまともに付き合っていたら俺の体が持たない。

俺が美恵子に惚れたのは、その類稀な『家庭っぽさ』故である。
料理はうまいし、一途に俺のことを慕ってくれる。
会社でも、俺の持参する愛妻弁当は羨望の的だ。
そんな俺たちは社内でもおしどり夫婦で通っている。
確かに幸せなのだが・・・・、

「おーい、阿部君、また奥さんからだぞー」

デスクで書類の整理をしている俺に、同僚が妻からの電話を冷やかし気味に取り次ぐ。
皆一様に茶化した表情で俺の方に温かい視線を注ぐ。
「また奥さんからだな」という半ば呆れた雰囲気だ。
そんな中、受話器の向こうから聞こえる妻の言葉は

「ねえ、あなた。経済に与える悪影響は火を見るより明らかでいてよ」

という意味不明な要求なのだ。
きっと周りの同僚たちは、受話器の向こうにカワイイ妻の甘えを予想していることだろう。
俺も事実そうであってほしい。

「会社に電話してくるなって言ってるだろう・・・」

甘えん坊の妻に困り果てているといった様子で、俺はこんなふうに答える。
同僚たちの羨望のまなざしを裏切らないためだ。

「あついあつい。まったくお熱い夫婦だこと」
「阿部君ごちそうさまっ」
「まったく、女房くらいびしっと教育したまえ、阿部君」

そんな囁きが聞こえる中、受話器の向こうの妻が言う言葉は、

「ラムズフェルド国務長官でいてよ」

・・・・・・。

「美恵子、今俺は忙しいんだ。とにかくその件は家に帰ってからな」

そういって、俺は同僚たちの冷やかしの目の中受話器を置く。

事実、幸せなんて、こうゆうものなのかも知れない。
愛妻家で通っている俺は社内でも人望が厚い。
社内で俺に求められる姿は、妻を大切にする理想的な夫なのだ。
ならば、俺は、それに応えよう。

今夜、家に帰ったら、思い切り妻を愛してやろう。
それが俺の背負った、宿命なのだ。

投稿者 hospital : 2003年03月31日 09:02