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2003年05月15日

104番

新規顧客になるという『○×商事』に挨拶へ行く途中のことだ。
俺は道に迷ってしまい、携帯電話で先方に道順を尋ねようとしたのだが、電話番号をメモするのを忘れていたことに思い至り、104番に電話をすることにした。

こうゆう時に『104番』は便利なものである。

”prurururururu…ガチャ”

「・・・あの・・・ぼく・・・タケちゃんです・・・」
「え?」


電話に出たのはまだ年端も行かない子供だった。
確かに104にダイヤルしたはずだが・・・・。

「間違いました、失礼します」

間違いを詫びてから、再度ボタンを確認しながら104にダイヤルした。

「あの、もしもし?104番ですよね?」
「・・・・・・・」
「もしもし?」

すると携帯電話の向こうからその子供の母親らしき声が聞こえた。

『たけしゃん!がんばりなさい!一人でできるって言ったでしょ?』

「・・・・?」
「あの・・・・ぼく・・・ぼく・・・・」

依然、携帯電話の向こうではたどたどしい子供の応対と、母親らしき女性の声が聞こえていた。

「あの・・・、鶴見区の『○×商事』の電話番号をお願いしたいんですが・・・」
「・・・・・、あの・・・・あの・・・ボク・・・たけちゃんです」
「・・・・ええと・・・」

困り果ててしまった。
どうして104に母親と子供が応対に出るのだ・・・。

「もしもし!?もしもし!?104番ですよね?」
「・・・・・・・・・・」
「もしもーし」
「・・・・・・・」

「すみませぇん、うちの息子がご無礼しました。ほんとまだまだ子供で・・・」
「は?」
「『一人でできるもん』なんて言ったから、やらせてみたんですけどねぇ・・・」
「あの・・・・」
「ほら、うちの子強がるところがあるから・・、ほんとすみませんねぇ」
「あの、○×商事の電話ばん・・・」
「ほら、タケちゃん、がんばって!」
「あの・・・」
「・・・ぼく・・・ぼく・・・・うぇっうぇぇぇぇぇ」

泣き出してしまった。まったく意味がわからない。

「あの・・・ね、タケちゃん、お母さんに代わってくれるかな・・・」
「うえぇっうえぇっぐすぐす・・・・うわぁぁぁぁぁ」
「・・・・・・」

「すみませぇん、うちの子もう少ししっかりさせなくちゃ」
「いや、だから○×商事の・・・・」
「ごめんなさいねぇ・・・」

そして電話が切れた。104番。いつからこんなシステムになったのだ。
念のため、もう一度きちんと確認しながら104をダイヤルした。

「父です」

104に電話して、いきなり父親と名乗る男が出た時、人は一体どうすればいいと言うのだろう。

「あの・・・・」
「息子が・・・・っ・・くううううう」
「いや、あのね、お父さん」
「ふがいないっ」
「いや、だから・・・・『○×商事』の電話・・・」
「ほんとうに・・・・すみませんでした・・・・・」
「・・・・・」
「許してください。息子にはまだ自立は早すぎたようです・・・・」
「・・・・・」


『タケしゃん!タケしゃんが頑張るって言うから、やらせてあげたんじゃないかっ』
『・・・うぇっ・・・うぇっ・・・・・』
『お父さん!タケしゃんだって頑張ったのよ!』
『うわぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・しくしく』
『お父さん!言いすぎよ。謝って!』
『タケしゃん・・・悪かった・・・』

携帯電話の向こうからこんな会話が聞こえた。確かに104に電話したはずだが・・・。

「お客さん・・・・すみませんでした。どうか息子を許してやってください・・・」
「だから・・・・『○×商事』・・・」

”ガチャリ”

いつから104が家族経営になったんだろうか。しかし、タケしゃんには早く成長してもらわなくては困る。

○×商事の電話番号が分からないじゃないか。

投稿者 hospital : 2003年05月15日 09:36