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2003年05月29日

ある男とその女

「別にね。ハァハァ・・」

明美は器具の上に仰向けになりペンチプレス80kgを何度も上げ下げしながら話している。

「蟹は好きじゃないのよ。食べるのはね。ハァハァ・・」


明美が筋トレをしているのを見ているのは好きだ。
ただし、筋トレ中の明美が話しかけてきてもそれに返事をしてはいけない。
いけないというほどのものでもないが、明美としては黙って聞いてくれていたほうが楽なのだそうだ。
だから俺は黙って聞いている。

「でもね。ハァハァ・・。蟹の実を出す時に『折る』でしょ?ハァハァ・・それでゆっくり『引っ張る』じゃない?ハァハァ・・・あの感触は好きなのよ。ハァハァ・・・」

ガチャン。

明美はペンチプレスを器具の上に置くと横にあったタオルを手にし、汗をふきながら器具の上に腰掛けた。
明美は汗をふきながら俺のほうを向いて話しつづける。

「わかるでしょ?あの感覚。ハァハァ・・。」
「おう。わかるよ。」
「返事しないで。ハァハァ・・。」
「ご・ごめん。」
「いいのよ。ハァハァ・・・。」

明美は立ちあがり、俺の方へ近寄ってきた。そして、俺の携帯を手にした。
明美は携帯をパカパカと開いたり閉じたりしながら話しつづけた。

「これと感触は似てるわ。ハァハァ・・。」
「おいおい・・。折るなよ。」
「返事しないでって言ってるでしょ!」
「ご・・ごめん・・。」
「別にいいのよ。ハァハァ・・。」

明美は急に「ん!」と声を上げ、

携帯を折った。

「そう。この感じ。ハァハァ・・。」
「お・・おい・・。俺のだぞ。」
「話しかけないで。」
「話しかけないでって・・俺の・」
「黙っててって言ってるでしょ!」
「う・・うん・・。」
「大丈夫よ。。また買ってあげるから。」

明美はそう言うと俺の壊れた携帯をポイッと投げ捨てた。
そして今度は俺のノートパソコンを手にした。

「あ・・明美・・。折らないよな?お・・おい。」
「感触が好きなのよ。あの逆向きに折った時の。ハァハァ・・。」
「だからって・・」
「黙ってて。」
「・・・・。」

ゴキン。

俺のノートパソコンは逆の方向に折れた。
明美はそのノートパソコンをしばらく見つめた後、ポイッと投げ捨てた。

「あ・・明美・・。」
「黙って。」
「・・・。」
「大丈夫よ。また買ってあげるから。」

「なにか違うのよ。蟹とは違うのよ。蟹はほら・・折った後にゆっくり引っ張るでしょ?そして実がついてくる。あれが気持ちいいのよ。」

明美はそうつぶやくと俺のほうに近づいてきて、俺の腕をつかんだ。
そして、関節をうねうねとゆっくり動かした。

「あ・・明美・・・。お・・お・・折らないよな?」

俺がそう言った瞬間。明美は「ん!」と小さな声を上げ、俺の腕を

折った。

「あぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」
「黙りなさい!って言ってるじゃない!!」
「い・・い・・・」

あまりの激痛に意識が一辺にふっとんでしまった。
ただ、これ以上叫ぶとこれだけではすまないということだけはなんとなくわかった。

「あ・・・あ・・・・」
「黙りなさい。」
「・・・・」
「大丈夫よ。結婚してあげるから。」

明美は静かに言った。そして続けて話し始めた。

「でもだめね。人間の体と蟹の体は違うのよ。蟹は表面が固くて中が柔らかいから、折った後に引っ張れば実が出てくる。でも人間の場合は、皮があるでしょ?引っ張っても皮が伸びるだけ。実は出て来ないのよ。わかるでしょ?」

明美はそう言うと俺の体をじっと見つめた。

「何かあるはずよ。そういう場所が。固くて柔らかい場所・・。」

嫌な予感がした。そしてその予感は的中していた。
明美は俺のズボンもパンツもいっぺんに剥ぎ取った。

そして言った。


「勃起しなさい。」


腕の骨を折られたばかりで勃起なんてできるわけがない。
しかし、明美の目は本気だった。
俺はなんとか勃起した。

明美はそれをつかんでウネウネと動かし始めた。
そして「ん!」と叫び、それを

折った。

しかし、折れない。折れるものではないのだ。固くて長いが、折れないものなのだ。
明美は不思議そうに首をかしげた。

「なんで?」

明美はキョトントした目で俺を見てそう尋ねた。

「そ・・そういうもんなんだ・・・。」
「そういうもんじゃわかんない。」
「そ・・そんなこと言われても・・そういうもんなんだ・・。」
「ふーん。」

明美は不満そうにそれをあいかわらずウネウネと動かし続けた。

「この感触も嫌いじゃないわ。」

明美は笑顔でそう言いながらそれをいじくり続けた。

「大丈夫よ。結婚してあげるから。」


俺は黙って天井を見つめて泣いた。

投稿者 hospital : 2003年05月29日 09:41