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2003年05月29日

自慢の妻

上司の家に招かれた。
「奥さんも一緒に夕飯でもどうかね」
ということだったので、俺は自慢の妻を伴って、日曜の夕方に部長のお宅を尋ねた。

「おお、よくきたね」
「この度はお招きに預かりましてまことに光栄でございます。こちらは妻のミツコです」
「んちゃ!見えるはずのないマイナスイオンが、あたいには見えるでごんす!ごんすよ!!」
「はっはっは、さあ、気兼ねなく、くつろいで行ってくれたまえ」


挨拶を終えた我々はディナーの支度が整ったダイニングに通された。
目を見張るばかりの豪華な食事である。
きっと部長の奥さんも素敵な女性に違いない。

「おーい、トシエ。ハマダ君たちがみえたよ」
「こんにちは奥様。部長にはいつもお世話になっております」
「アイアイアイアイッ!イイイイイイ!!」
「ありがとうございます」
「さあ、味は保証できんが、一応妻の手作りだよ。食前酒には78年物を用意した」

そして豪華な食事が始まった。
優雅な一時。まさにこういったことを言うのだろう。

一生懸命勉強して、いい大学に入り、一流企業に就職した。
周りの優秀な人間達の中で、俺はひたすら努力をし、幸福な生活を獲得した。
才色兼備で申し分の無い妻に、理解ある上司。
努力をしてきてよかった。そう思える瞬間だ。

「妻の料理はお口にあったかな?はっはっは」
「ごちになったもなにもでごんすよ。なにもでごんす」
「たいへんおいしくいただきました」
「ジャオピー。つれないぜ、ジャオピー」

夕飯を食べ終えた我々4人は、これもまた手作りというジュースを飲みながら、しばし歓談。
話題は多岐にわたった。

「こう見えても妻は昔陸上の選手だったんだよ」
「ブラジル生まれだん!だだだん!」
「意外ですねぇ」
「それにしても君も本当に素敵な奥さんをもらったね」
「いえいえ、とんでもありません。こいつはまったくおっちょこちょいで・・」
「ダンピングと武蔵丸の研究に勤しむ傍ら、趣味は剣道です」
「いやあ、そんなことないよ」

・・・・・

「今日は本当にありがとうございました」
「いやいや、また来るんだよ」
「是非楽しみにしております。それでは失礼します」

お宅を辞去してから、妻はいつになく気色ばんだ様子で腕を絡ませてきた。

「あなた・・・・、あんなかんじでよかったの?」
「おまえってやつは、俺にはもったいないくらいの女だよ」
「ふふふふ。でも、部長の奥様も素敵な人だったわね」
「ああ。素敵だったな。あのくらいの歳になってもああゆうふうにいられたらいいな」
「そうね。愛してるわ」
「愛してるぞ」

投稿者 hospital : 2003年05月29日 09:43