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2003年06月27日

恥骨ミントン

夜になり、帰ってきた妻が机の上においたパンフレットには聞きなれない言葉が書いてあった。

恥骨ミントン。

要項を読んでみると、それはスポーツであった。


要項には『バトミントンの恥骨版です』と書いてあるが意味がわからない。
続いてこう書いてある。

『私達が提案する上昇すべき素晴らしいスポーツです』

宗教だ。私は危険を感じ、妻を問い詰めた。

「おい。お前宗教なんかにはまってるのか。」
「違うわよ。最近アタシちょっと太ってきたでしょ?」
「そうだな。」
「ちょっと気にしてたのよ。そしたら声かけられたからちょっと行ってみただけ。」
「おいおい。そういう勧誘にひっかかるなよ。」
「ひっかかってないわよ。楽に痩せられる上にタダなのよ。宗教だろうがなんだろうが関係ないわよ。」
「なんだ。お前やる気なのか?」
「まあね。」
「おいおい大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。だからタダなんだってば。一つね。壷買うだけでいいの。あとはずっと無料。」
「壷?」
「壷。」
「おい。壷だぞ。宗教の定番じゃないか。目を覚ませ。」
「そうね・・。ある意味アタシは目を覚ましたかったのかもしれない・・・。」
「おい!頼むから遠くを見てそんなことを言うのはやめてくれ。自分の妻が宗教にはまるなんて考えられない。」
「冗談よ。ほら。あなたの同僚の田中さんもやってるのよ。だから大丈夫。たしなむ程度にやるだけよ。壷買うっていうのも冗談。」
「・・・・。」

田中とは私の学生時代の友人で、同じ会社に入社し、同じ社宅に住んでいる。
気の許しあえる友人である。その田中も私の妻と同じ「恥骨ミントン」をやっているらしい。
私は不安を感じ、田中に電話をしてみた。

「おう。田中か。」
「なんだよ。こんな休日に。」
「今日飲みにいかないか?」
「勘弁してくれよ。明日仕事だぞ。」
「お前『恥骨ミントン』って知ってるか。」
「おうおう。」
「おうおうって大丈夫なのか?宗教じゃないのか。あれ。」
「宗教?はは。違うよ。スポーツスポーツ。」
「どういうスポーツなんだ。その恥骨ミントンっていうのは。」
「まあ・・楽しいよ。それだけだ。」
「なんか痩せるらしいな。」
「まあな。がんばれば痩せるだろうな。悪いけど明日早いからもう切るぞ。」


田中の言葉は曖昧でよく意味がわからないものだった。
しかし、田中もやっているのだ。それほどおかしなものでもないだろう。
私は不安を残しながらも、少しの間妻を見守ってみることにした。
それから、妻は毎週日曜日に出かけるようになった。

「今日も行くのか。」
「うん。これがね。楽しいのよ。」
「大丈夫なのか。」
「大丈夫よ。まったくあなたは心配性ね。」

「一つ聞いていいか?」
「うん。」
「なんでスポーツなのにそんな化粧していくんだ?」
「じゃあ行ってくるわね。」

妻は私の質問に答えず出かけていった。
化粧だけではない。妻は私が見た事もないような派手な服を着て出かけていった。

次の日。会社で田中を見かけた俺は昼飯に誘うことにした。

「おう昼飯行かないか。」
「そうだな。」

「どうも最近妻の様子がおかしくてな。大丈夫なのか。その恥骨ミントンは。」
「早苗さん・・いや・お前の奥さんなんか言ってたのか?」

早苗とは私の妻の名前である。

「・・いや。何も言ってないけど、恥骨ミントンを始めてから急にオシャレしだしてな。」
「ああ。確かに最近きれいになっ・・・いや。なんでもない。」
「お前・・」


嫌な予感が頭をよぎった。

そしてその予感は当たっていた。


次の週の日曜。
私は一人、居間でテレビをつけたまま昼寝をしていた。
すると、テレビからこんなニュースが聞こえてきた。


『今日未明、『恥骨ミントン』と称し、不特定多数の人との肉体的関係を目的とした団体が摘発されました。主に主婦やサラリーマンを対象としたこの団体は・・・・』

投稿者 hospital : 2003年06月27日 09:56