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2003年07月02日

友人万歳

「『嫁の仕業だな。このやり口からして。』って言ってみるとするじゃん?」

私の友人で、ありえないシチュエーションを勝手に想像するのが好きな男がいる。そんな彼のことを私も嫌いではない。今回もいつもの調子で彼は話しかけてきた。


「そんでさ。『巻き毛かよ。』って突っ込まれるとするじゃん?」
「誰に?」
「それは従兄弟だろうね。やっぱり。」
「ちょっと待って。全然関係がわからない。」
「だからぁ。『嫁の仕業だな。』っていうでしょ?最初に。」
「うん。」
「そしたらさ。従兄弟に『巻き毛かよ。』突っ込まれたんだよ。そこまではわかる?」
「全然わかんない。」

別に私は彼の話を理解したいとは思わない。彼が色んなことを想像して目を輝かせているのを見ているのが好きなのだ。今回の話もまるで筋がわからないが、彼の目はいつもと同じようにキラキラと輝いているのだ。

「そんでさ。『またゴルフかよ・・。』って投げやりに言うとするじゃん。姑が。」
「姑がそんな口調で話すかな。」
「だからさ。そういう姑なんだよ。わかる?」
「まあいいや。そんで巻き毛とゴルフとどういう関係なわけ?」
「もう。先急ぎすぎ。ここからだよ。話は。」
「そっか。ごめん。」

大抵、彼は思いついた言葉を次々とあげて行き、最後までそれらが結びつく事はない。いつものことだ。でもさっきも言ったように、私は彼に実のある話をして欲しいなどとはこれっぽっちも思っていない。

「これっぽっちってどれくらい?」

彼はたまに私の頭の中で考えた事を読み取ってしまう。他人に自分の頭の中を読まれるのは恥ずかしい事でもあるが、彼に対してはそういう感情を持った事はない。彼は無邪気な好奇心だけを持って話すからだ。

「『これっぽっち』と『ひとりぼっち』って似てるじゃん。似てるよね?」
「そうだね。」
「でさ。『まつぼっくり』も似てるじゃん?」
「うーん。」
「『栗キントン』も頑張れば似てるよね。」
「似てないよ。それは。」

よくわからないが彼と話すのは妙に楽しい。私が彼に同意しようがしなかろうが彼は思い付いた事を次々と口にする。もうそんな友人も彼だけになってしまった。

「でさ。話戻すんだけど。『巻き毛かよ。』って従兄弟に突っ込まれた場合さ。最初に『嫁の仕業だな。』って言ってしまった手前、ちょっと気まずいよね?わかる?」
「全然わからない。」
「でもさ。気まずい顔は出来ないじゃん。相手は姑だから。」
「だからわかんないってば。」
「そしたらさ、ゴルフ行くよね。夫は。」
「は?」
「社交辞令で。行くよね。この場合。ゴルフ。」
「ちょっと待って。全然意味がわからない。」

彼はなんとか私に自分の中のストーリーを説明しようとしているらしい。まったく意味もわからないが、なんだか楽しかった。私はこの友人がかわいくてしょうがないような気がしてきた。彼の話をなんとか理解してあげようと、彼に話しかけようとした瞬間、弟の声が聞こえた。


「あのさ。お姉ちゃん。」

いつの間に私の部屋に。

「お姉ちゃんさ。鏡に向かって一人で話すのいいかげんやめなよ。気持ち悪いから。」
「わかったから人の部屋に勝手に入って来ないで。」


今年で私も30になる。もしかしたら私は孤独なのかもしれない。

投稿者 hospital : 2003年07月02日 10:00