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2003年07月07日

必殺技

「必殺!携帯ボンバーっ」

携帯電話を相手の顔めがけて投げつける技だそうだ。聡子は私の携帯電話をむんずと掴むと、私の顔めがけて思い切り投げつけた。携帯電話は私の右頬に強烈にヒットし、はねかえって台所の床に叩きつけられ無残にも壊れてしまった。どうやら口の中を切ったらしい。血の味がする。

聡子はかわいい女だ。必殺技が大好きで、ちょくちょく私を実験台にする。


「・・・どう?携帯ボンバーっていう、新しい技なんだけど・・・」

自信のなさそうな表情で私に意見を求めるのだ。可愛くて、抱きしめたくなるくらいだが、私はうぶなので、そんな真似はできない。ただ、「いいよ。素敵な技だ」と誉めてやることしかできない。

「よかった・・・・うれしい」

はにかんで喜ぶ聡子は本当にいとおしい。「もう一つ、新しい必殺技があるんだけど・・・」。もじもじと、言い出す聡子は本当にいじらしく、私はそんな時、「さあ、かけてくれ」と男らしく受けて立つ。先ほどの必殺技で歯が何本か折れたようだ。「かけてくれ」が「はへてふへ」になってしまい、そんな私のことを聡子は心配そうに見ていたが、「かわいい・・・」と言った。

聡子は、カワイイ女だ。次の必殺技は一体、どんな技なのだろうか。

「えっと・・・。名づけて『必殺!迷惑』なんだけど・・・」
「ほうほう、はあ、はへてふへ(さあ、かけてくれ)」

自信なさげな聡子はおもむろに立ち上がると、私の家の食器棚から食器類を取り出し、ことごとく淡々と割っていった。途中で息も上がり疲れもみられたが、結局聡子は食器類全部を割って、さらに水道の蛇口を壊し、窓と言う窓の硝子全てを粉々にしていった。めまぐるしくも軽やかに今度はどこかに電話をしはじめた。「あのぉ、斉藤ですけどぉ、特上寿司を30人前。ええ、これから、すぐに作ってください」とすし屋に出前を注文した。他にピザ屋など何軒かに電話を終えたあと、弾む息をなんとか整えて、上目遣いで私のほうを自信なさげに、みつめた。

「・・・・どう?」

聡子はかわいい女だ。「ああ、ふほふめいふぁふたったお(ああ、すごく迷惑だったよ)」。

「・・・うれしいっ」

顔を赤くして喜ぶ聡子がいとおしくてたまらない。

「今度は・・・、『必殺!お金をもらう』って技なんだけど・・・」

聡子は私のポケットから財布を取り出し、中にある紙幣と硬貨を抜き取ってから、自分の財布にしまいこんだ。

「・・・どう?」

聡子がいとおしくてたまらない。私はかわいい聡子のために、これからも進んで必殺技の実験台になろうと思った。「次は・・・『必殺!新しい彼氏』なんだけど・・・・」。
すると、ホスト風の男が突然家に上がりこんできた。

それからというもの、私は聡子とその男のために毎晩料理を作って出してやっている。

「超うまいっすよ、斉藤さん」
「今度はね・・・、必殺『新しい彼氏と一緒にお風呂に入るので、お風呂沸かして』って技なんだけど・・・」

聡子は、本当に可愛い女だ。居間では、ホスト風の男と聡子が楽しそうに話しているのが聞こえる。風呂の準備をしながら、私は必殺技の実験台でいることを誇りに思った。

投稿者 hospital : 2003年07月07日 10:03