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2004年03月16日

健康な世界

充電してね。


家に帰ると妻が言った。

俺は言われた通りテーブルの上に置かれているプラグを手にし
片方を首筋に指し込んだ。
そして、電源プラグをコンセントに指し込んだ。

じじじじじ。


充電が開始された。力がみなぎってくる。

健康ブームの中、この「健康プラグ」は今までのどんな健康食品や健康機材よりも
圧倒的に優れた効果を発揮するものとして売り出された。


三分間のチャージで健康をゲット。


テレビのCMで全裸のみのもんたが登場した時は日本中が驚いた。
うつろな目をしたみのもんたが、「元気をゲット」とボソリとつぶやきながらこのプラグを首筋に指し込む。
その後、画面全体にモザイクがかかるというCMだ。

この風変わりなCMのおかげか
「健康プラグ」は一瞬のうちに日本中に広まった。
そして、実際このプラグは予想以上の効果を発揮し、すぐに世界中に広まった。

疲れも眠気も食欲もこのプラグを使って3分間充電するだけで一気に吹っ飛んでしまうのだ。
食べる必要も寝る必要もなくなり
1日24時間フルに使えるようになった。

当然、人々のライフスタイルは変わった。

台所はなくなり、寝室もなくなった。
夜も昼も境はなくなった。
3分間の充電で精神的にも肉体的にも健康な状態を手に入れられるようになり休暇も必要なくなった。

世界は新たな発展を始めた。
科学の分野では短い期間で大きな進化を遂げた。
芸術の分野では健康プラグのおかげでアーティストの苦悩がなくなり
アーティスト自体が激減した。

絶対に充電しないで今まで通り生活していくのが人間のあるべき姿ではないか
と主張する「日常派」と呼ばれるグループも生まれたが
健康な人々は彼らを大人な態度でさらりとかわした。
徐々に彼らも意義を見失い、健康プラグを使うようになった。

そして、世界は健康な人間だけになった。


全ての人間が人を憎まず、妬んだりもせず、人に対して悪意を持つこともなくなった。
戦争もなくなった。

食べていく為のお金も必要なくなり
仕事をする必要もなくなった。

ストレスや退屈もなくなったので
ありとあらゆるサービス施設もなくなった。

都会は一掃された。

汚いビルは次々に消え、東京は緑の大地に戻っていった。


世界中が緑の大地に戻っていった。


必要なのは、コンセントだけだった。

人は充電さえすれば他に何もしなくてよくなった。

ただ黙って突っ伏しているだけで健康だった。

会話は必要なくなり

友達も恋人も必要なくなった。


そのうち世界中の人々はプラグをさしっぱなしのままで突っ伏すだけになった。

世界中の人々が突っ伏した。

世界人類が一人残らず健康だった。


健全な数だけ子供も産まれた。

でも不思議なことに

生まれた子供は数ヶ月すると皆死んでしまった。


なんとか子孫を残さねばと人々は健康な頭で考え


誰かれ構わず交わり合ったが


努力は実らず


ある日、地球上から人類は一人残らずいなくなってしまった。

投稿者 hospital : 2004年03月16日 16:25