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2004年06月23日

コスモ

ゴキブリ。

そう書くだけで僕は身の毛がよだつ。

彼らが走る姿を見た瞬間、すべてを忘れ、僕の注意はすべて彼らに注がれる。


以下、ゴキブリのことを「コスモ」と呼ぶ。


僕がコスモ退治に踏み切ったのは1週間ほど前だ。
もう6月も半ばにさしかかり、台所にコスモが出始めた。
僕の部屋は決して汚い訳ではない。
しかし、1階で湿気の多い立地のせいか夏になるとコスモが出る。

僕はコスモ退治用の、コスモプルン(ゴキプルン)とコスモホイホイ(ゴキブリホイホイ)を買った。
友人にそれを併用するのが一番だと言われたからだ。

それらを台所のあちこちに設置し、僕はなるべく彼らのことを考えないようにした。
頭の中に彼らの姿が浮かぶだけで嫌だった。


こんなにも皆から嫌われる人達(コスモ達)
見た目のせいもある。足の早さのせいもあるし、汚い所に出るという意識のせいもあるだろう。
長い歴史を知っているだけに彼らに必要以上の恐怖を抱いてしまうということもあると思う。

進化し、時代の変化に耐えて来た連中。

恐竜だって滅びた。それなのにコスモ達は生き残ってきたのだ。
サルは人間に進化し、人間だっていつかは更なる生物に進化するだろう。

それなのにコスモは何万年もコスモとして進化してきた。

純血。


夢は信じるものだと、どこかで聞いたことがある。
信じ、貫くから叶うのだと。

そうだとしたら、コスモ達の夢は果てしなく、
夢を貪欲に追いかけたコスモ達の意識も果てしないのだということだろう。

夢を貪欲に追いかけた者はいつか評価されてきたではないか。


ゴッホだってそうだ。少し前、ノーベル賞を受賞した田中さんだってそうだ。


変人だと罵られ、どんなに迫害されても、自分の思いを貫いた人たち。

人はいつの日か、何事もなかったかのように彼らを尊敬し始めたではないか。

僕は先ほど、台所のコスモホイホイを覗いてみた。
2匹のコスモがそこにいた。


いや


Ⅱコスモ、存在した。


気が遠くなった。

こんなにいたんだ。

僕の心の中をコスモの黒い影が走りまわった。


そんな意識に耐え、心の目で彼らを眺めようと思った。

彼らは純潔のアーティストなのだと。
純潔のサイエンティストなのだと、自分に言い聞かせた。


疑いは晴れない。


本当にそうなのか?

お前ら本当にそんなすごい連中なのか?

何か考えてるのか?


残飯をあさるだけの単細胞のバカにしか見えないじゃないか。

Ⅱ匹のコスモはコスモホイホイ(以下、『ハウス』と呼ぶ)の中で
そんな僕の疑いの念に黙って耐えているような気がした。


そんな言葉は聞き飽きたよ。


そう言われているような気がした。


オレはオレの道を行くぜ。


ハウスの中でコスモ達の赤黒い背中の輪郭だけがやけに目に付いた。


耐えられない。

僕はもう今すぐにでもこのハウスをゴミ袋に突っ込んでゴミ置き場に放り投げたい気分だ。
実際そうするだろう。


所詮、そんなもんさ。

そうやって流されて生きていけよ。


彼らはそう言うだろうか。
いや、純潔の彼らはもっと真摯な言葉を持っているかもしれない。


OK。兄弟。

いつか愛してくれよな。


そんな屈託のない別れの言葉を用意しているかもしれない。

どうなんだ。

どっちなんだ。

もう考えるのもつらい。

ごめんな。気持ち悪いんだ。

しょうがないよ。オレは心からお前らのことを気持ち悪いと思う。

流されてないと思うよ。

心から、揺るぎもしない直感でそう思うよ。


もうキミ達のことを考えるのはよそうと思う。


いつか君達が評価される日がきたら、こんなオレをめいいっぱいバカにしてくれ。

そうなって欲しいと思ってるよ。


だけど、少なくとも今、オレと君達は『敵』なんだ。


だから、愛も憎しみも込めて最後に一言言わせて欲しい。

気持ち悪いけど、


がんばれよ。

投稿者 hospital : 2004年06月23日 16:41