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2004年08月07日

最後のディスクレビュー18

人は誰も人生を~ ふりか~え~る~

昔、そんな歌があった。

小学生の時、下校の時間になると校内放送で必ずその歌が流れた。
今思えば、あれは校長先生の趣味だったのだろう。
小学生の放送委員がそんな歌を選ぶ訳がない。

あの頃、もしかしたら校長先生は奥さんとうまくいっていなかったのかもしれない。
もしかしたら可愛がってきた一人娘に初めて「おっさん」と呼ばれた頃だったのかもしれない。

毎日、たそがれながら一日を校長室で過ごしていたのだろう。

オレは一体何のために。何のために生きているのか。

校長先生は一日中そんなことを思っていたにちがいない。


「おい」

ケンジだ。右手にガリガリ君、左手にもガリガリ君を持っている。

「ちょっと煙草買ってくる」

めずらしい。自分で買いにいくなんて。
というより、そんなことをアタシに報告するなんて。

「1週間くらいかかるけど、探さないでくれ」

そういうことか。

「別にな・・浮気相手とハワイへ行ったりするわけじゃないんだ」

ドギマギしながらいい訳をするケンジ。

めずらしい。今更、浮気をするくらいでいい訳をするなんて。

「お前にとって一番大切なものってなんだ」

大切なもの?

なんだろう。

一番大切なもの?

ふとジョニーデップの顔が浮かんだ。

だけど口に出したら殺されるし、それに、たぶんそういう話じゃないような気がした。

なんだろう。

まあいいわ。

そろそろディスクレビューに入るわね。


まず最初ははっぴいえんどの「風街ろまん」

このアルバムに入っている「風をあつめて」という歌が
映画「ロストイントランスレーション」で使われていて、今はっぴいえんどは熱い。

「熱いよね」

そう言うのが好きだった。あれは学生時代。
ケンジは夏でも冬でもガリガリ君を食べていた。
そして、色んな物に熱中する人だった。
ある作家について、ある映画監督について、あるミュージシャンについて。
ケンジは熱中すると必死にそれをアタシに伝えようとした。
アタシも必死にわかろうとした。

「熱いよね」

アタシはわかったふりをしてよくそんな相槌をうった。
その度にケンジは得意気に

「だろ」

と言った。

今、ケンジがハマっているのは女子バレーの「プリンセスめぐ」だ。

熱いというか

若いと思う。

お次はザ・ニューイア―の「ニューネスエンド」

昔、夏の夜に兄とよく山に登った。
小学校1年生かそこらだ。
クワガタをとるためだ。
もちろんアタシはクワガタになんか興味なかったけど強引に付き合わされたのだ。
アタシは夜の山が恐ろしくて仕方なかった。
けど、それは兄も同じで怖いからアタシを連れていったのだ。
アタシが「怖い」と言うと、兄はヒザをふるわせながら「バ・バカ。怖がるやつがあるか」と言った。

あの頃から、アタシは少しも変わっていない。

最後はフォークインプロージョンの「デア・トゥ・ザ・サプライズド」

マイケルJフォックスの「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」と同じくらい好きだ。


気付いた人もいるかもしれないけど今回は「観察する人達」に注目してみました。
たまに「趣味は人間観察です!」という人がいる。
アタシはなぜだかわからないけど、そういう人が嫌いだ。
もしかしたら、前世で「趣味が人間観察の人」となにかあったのかもしれない。
でも、彼らの音楽を聞いているとアタシの頭の中には、彼らの目から見えた景色が浮かんでくる。
静かな心地良い景色が目に浮かぶ。
アタシもこんな景色を見れたらいいのに。
そんなことを思う。


「ただいま」

煙草を買いに家を出てから1週間。
ケンジはヒゲモジャの顔で帰ってきた。

「インドまで行ってきた」

ケンジはそう言って、机の上に得体のしれない煙草らしきものを置いた。

箱には「ザ・ニュー・インド」と書いてあり、その下に「歌舞伎町店」と書いてある。

インドはきっと色んな所にあるのだ。

ケンジは黙って窓の外の景色を眺めている。

「ケンジ」

話しかけても降り返らない。

突然、ケンジは言った。


「熱いよな」

「え?」

「熱いよな」

「な・なにが?」

「なんていうか」

「うん」

「生きるって熱いよな」

「・・・・」


どうしたんだろう。


「オレ気付いたよ」

何にまた気づいてしまったんだろう。

「オレ、間違ってた」

間違っている人が間違っていたことに気付くということは根本的に間違っているとアタシは思う。

「すまなかった」

今更謝られても困る。

「オレな」

うん


「プリンセスめぐになれなかった」



アタシはそれでもケンジを愛している。



そんなアタシの最後のディスクレビュー。

与作の「北島三郎」

下克上の最終形だと思う。

ともかくアタシは、山本ジョージが北島三郎のことを「オヤジ」と呼ぶのが、あまり好きではない。


そんな感じかな。

それじゃあまたね。

投稿者 hospital : 2004年08月07日 20:58