2006年03月22日
新築訪問
小学生以来の親友が家を建てたから遊びに来いと日曜日に僕を招待した。
お祝いをもって、彼の新居を訪れた。
駅からしばらく歩いていくと、家の前でSが笑顔で手を振っている。
その背後には彼の新居、庭付き一戸建てが聳え立っていた。
「おめでとう」
「ありがとう。俺もやっと一国一城の主だよ」
さて、と挨拶が終わったところで、まじまじと新築を眺めたのだが、どうにも変に見える。
どうにもおかしい。
「あのさ、この家、浮いてない?」
「気づいたか?1F部分が無いんだ」
よくみると、1Fがなく、いきなり2Fだ。
2Fを支える壁も無ければ柱も梁も、基礎さえもない。
「気づいたか?って、なんで浮いてるのよ」
「いや、新しく開発された工法らしくてさ。風通しを良くして、目的に純粋に設計していくと最終的にはこうゆう形になるんだってさ」
「だってさって、ならないよ普通。よく考えてもみろよ。不思議だろ?」
「俺も最初はとまどったよ。だって1Fが無いんだもんな。1Fがあってこその、2Fだろ?けど、そこが日本人の悪いところでさ。最初から2Fでもいいじゃないっていう」
そうゆう問題ではないと思う。
しかし、Sがそう言い切るのだから、それ以上なにも言えない。
「まあ、入れよ」
「ちょっとまてよ。お前、なんで羽が生えてるんだよ」
「え?だって、いきなり2Fだと、羽だって生えるよ」
「はえないよ普通。お前みたいに異常体質じゃないと、この家に入れないのかよ」
「やれやれ・・羽くらいはえろよ」
ぶぁさ、ぶぁさ、ぶぁさ。
ひゅー、すぽん。
目の前で親友が突如飛び立ち、家の中へと入っていった。
「はっはっは、しょうがないなあお前も。今からロープたらすから、それではいれよな」
しかたなく言うとおりに少々ぶざまだが、ロープにしがみついて家の中に入った。
中に入ると、ものすごく広いフロアだった。
「なんでこんなに広いんだよ。見た目より全然でかいよ。おかしいよこれ」
「遊び心満載だろ」
「いや、そうゆう問題じゃなくて、法則完全無視かよ」
遠くがかすんでいる。
しかも畳敷きである。
「ごめん。頭がおかしくなりそう」
「まあ、そこ座れよ。今コーヒー淹れるから」
「ああ・・」
「あ、わりい、コーヒー切れてるや。唾飲んでてもらっていい?」
「それなら、言われなくても飲むよ」
「あのさ、座ってられると落ち着かないから立っててもらえる?」
なんとなく納得がいかないが、そろそろと立った。
「これ、新築祝い」
「いやー、悪いなあ。ほんと申し訳ない。2万か。少ないなあ」
「・・・わるかったな」
「わるいなあ。ひっこしたばっかで、なんにもそろってないんだよ。テレビでもつける真似しようか?」
「ああ、やってくれよ」
「ええっとぉ、リモコンどこだっけなあ」
真似が始まった。
演技に熱が篭っている。
「あ、ばかぁ、お前それ座布団じゃないって、リモコンだよぉ。似てるけどさあ。わはは、馬鹿馬鹿」
「・・・」
「さて・・と、えい、えい。あれぇ?つかないぞぉ。あっ、ついたあ。最近の機械は分からないなあ」
「ぷぷぷ、またみのさんでてるよ」
「・・・あの、そろそろ帰るな」
「ええ?もう帰るのか?お、もうこんな時間か」
「30分しかたってないけどな。それに、まだ昼だけどな」
「じゃあ、2Fだし、気をつけて落ちてな」
「ああ・・」
「押そうか?」
「いや、いい」
窓から気合を入れてえいと飛び降りた。
いやがらせかと思うくらい庭はコンクリートで固めてあった。
「大丈夫かぁ~」
2Fからこだまする声が蹲った僕のところまで届いた。
捻挫くらいはしていそうな激痛である。
脂汗をかきながら、庭付き一戸建ては良く考えて建てようと思った。
投稿者 hospital : 2006年03月22日 23:08
