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2005年05月08日

喫茶店にいきたいんだ

ジンをビールで割ったものをがぶがぶ飲みながら(美味しいですねこれ)
フィルムチャンネルでジャームッシュのコーヒーアンドシガレットをみた。
(こちらアメリカはもうテレビで放映しちゃってるのね)
映画館公開当時は友人から否定的な意見をきいていたのでみなかった。
でも面白いじゃないか。あいついったい何をみてたんだ。馬鹿め。殴るぞ。(どうも、酔ってます)
ひどく酔っ払っていたから、気がふれたようにゲラゲラ笑いながらみた。
家でひとりで映画を観ることの利点は、好きなときに好きな具合に笑ったりできるってことだ。
俺は好きだな、この映画。
だって、コーヒー大好き、煙草もまあ好き、与太話大好き、
それでもって、喫茶店文化旺盛な中部圏で生まれ育った俺としては、
最高にぐっと来ちゃうわけ。
(ところで、東京にいたとき、中坊時代から待ち合わせは喫茶店だったという話をすると、他の地方出身の人間からマセガキ呼ばわりされたんだけど、あれは不思議。当時、それは普通のことだと思っていた。名古屋出身の先輩も同じ事を言ってましたよ)

でまあ、映画をみているうちに喫茶店が恋しくなりましたね。
NYはたくさん素敵なカフェがあるけれども、どこも禁煙なんです。
あとコーヒーが美味しくない。漫画雑誌置いてないからつまんない。(アメコミを置きやがれ、馬鹿野郎)
ああ、東京に行きたいなあ。
東京の喫茶店でコーヒーを飲みたいなあ。
杉並あたりの住宅地にある小さな喫茶店でコーヒーを飲みたい。
暇をもてあました裕福な主婦が趣味感覚で営むそんな喫茶店でコーヒーを飲みたい。
本棚にはジャンプやマガジンではなく、スピリッツとかスペリオールとかモーニングとかが置いてあって欲しい。
女性自身とかSPAとかそういう表紙が派手なのじゃなく、週刊新潮と週刊文春とかが置いてあって欲しい。
間違っても「俺の空」全巻とか、「ビーバップ・ハイスクール」全巻とかあって欲しくはない。
メニューに「焼きうどん」とか「鉄板焼き定食」とかもあって欲しはくない。
静かに有線のジャズチャンネルが流れていて欲しい。
店に入ったらドアについた鐘がカランコロンと音をたててほしい。
それですぐさま店のママ(美人)がお絞りと水を持ってきて欲しい。
コップの中には氷がたくさんはいっていて、カラカラと気持ちよい音をたていてほしい。
メニューを渡される前に注文をしたい。俺はコーヒーを飲みたいだけなんだから。
注文するとき「コーヒー」なんていわない。「ホット」なんてオッサンみたいなこともいわない。
ここは「ブレンド」といいたい。礼儀正しく「ブレンドください」といいたい。
コーヒーはサイフォンで淹れて欲しい。ミルクは特別な容器に入っていて欲しい。
コーヒーカップの取っ手は右手側に向いていて欲しい。一方、スプーンは反対向きであって欲しい。
コーヒーがきたら、2、3口きちんと味わいたい。
それから、今週のスピリッツを読みながらマイルドセブンをぷかぷかやりたい。
鳴ったらすぐに気がつくようにと、携帯電話をテーブルの上に置いておくのだけれども、できれば鳴ってほしくない。それでも電話がかかってきたら、すぐに通話ボタンを押したい。要件がすんだらなるべく早く切りたい。喫茶店で長電話は好きじゃないから。
一通り漫画雑誌を読み終えたらポケットから文庫をだして読みたい。
文庫は本屋のカバーがかかってなきゃいけない。読んでる本のタイトルがまるわかりなんて、かっこ悪いもの。
ただし、新潮文庫の場合は、本屋のカバーも元々のカバーも取っ払っちゃって、
むき出しの状態であるならOK。あれはクール。
本を読むのに疲れたら、ぼおっと頬杖をつきながら、カップにすこしだけ残った冷えたコーヒーをすすりたい。
カウンターのむこうのママさんには、声をかけてもらいたくはない。
世間話なんかしたくない。若者になれなれしい大人は好きじゃない。
昼間からぷらぷらしていったいこの子は何なのかしら、と密かに思っていてほしい。
ぼおっと退屈をもてあそびたい。ぼんやりしたい。だらだらしたい。
ここらで常連客がはいってきてほしい。自営業風の中年男であってほしい。
ポロシャツを着てスラックスをはいて、サイドバッグを持ったそんな中年男が来てほしい。
「いらっしゃいませ。あら、こんにちは武山さん」なんてママさんの挨拶に、
「どもども、いやーあついねー。まいっちゃうよー」とかなんとか言いながら
ドスって音をたてて椅子に腰を下ろしていただきたい。
出された水をグビグビ飲んで、お絞りで顔や首筋を拭きながら
「こーしー」と最高にオッサンらしい一言を放ってほしい。
それでもって「ミヤちゃん今日きた?」とか常連風ふかせてほしい。
「宮本さん、さいきん来てませんよ」とママが答えるのを聞いて、
「あいつもアレがあるから忙しいんだろうなー」とか言って欲しい。
アレがいったい何なのかは俺にはわからない。
オッサンとママさんの世間話がひと段落したところで、
「来週の火曜日は午前だけの営業になりますので、よろしくお願いします」とママさんに告げられてほしい。
するとオッサンは「え、なになに、どうしたの?」とまったくデリカシーなくママさんのプライベートを詮索してほしい。
「たまたま、お芝居のチケットが手に入ったもので、それにいこうかと思って」ママさんにはちょっと恥ずかしそうにいってほしい。
芝居を見に行くから店を休むというところがまったく趣味の店めいてていいのだけれど、まあ客商売としてはまずいものね。
そんなことは意に介せず「お芝居って、誰の?」そうオッサンにはきいて欲しい。
オッサンが芝居に関してどれくらいの知識と関心があるのかわからないけれど、とにかく、きいて欲しい。
ここで、ママさんが、ハイレグジーザスとか阿佐ヶ谷スパイダースとか答えたらどうしよう、と俺をドキドキさせて欲しい。
「イッセー尾形さんのひとり芝居です。友達が大ファンで、チケット二枚あるから一緒に行こうっていうんです」
ほっと胸をなでおろしたい。イッセーさん、うちの母親もファンなんですと心の中でいいたい。
それを聞いたオッサンには
「えー、イッセー尾形はチケット買うの大変だっていうよ。そりゃプラチナチケットじゃない。いかなきゃ損だね」
とか言って欲しい。
ほう、オッサン、さすがにイッセー尾形くらいは知っていたかと見直したい。
そして、プラチナチケットという中途半端に普及したカタカナ言葉、
きっとオッサンの長い人生で今初めて使ってみた言葉であると勝手に推測し、
なんとなく心の中で拍手をしたい。
「いやあ、そりゃうらやましいなあ」さらにオッサンにはそう言ってもらいたい。
「プラチナチケットだよそりゃあ。うん。プラチナだ」オッサンらしく何度も同じことを言ってもらいたい。
それでもってさらに、「イッセー尾形っていったら、あれだね、つかこうへいの劇団にいた人だったよね」とか知った口きいていただきたい。
ママさんには「あら。へー。そうでしたの。知らなかったわ」とかいいながらも小首をかしげて欲しいし、俺も小首をかしげたい。
そんなこと、俺きいたことがない。きっと、オッサン、デタラメを言っている。
ここで、このオッサンはイッセー尾形と誰かを勘違いしていると気がつきたい。
そして、その誰かとは誰であるかについてすこし考えてみたい。
つかこうへい、ときて、頭に浮かぶ俳優は二人。風間杜夫か、平田満か。
どちらもイッセー尾形とは全然似てない。
おい、オッサン、あんた一体誰と勘違いをしてるんだ、と叫びたい気持ちをぐっとこらえたい。
(ところで、風間杜夫をみても「あ、銀ちゃんだ!」とはならず、平田満をみると「あ、ヤスだ!」とすぐ口走ってしまうのはなぜか。)
どうも釈然としないので、オッサンにはどんどん発言していただきたい。
「いや、早稲田のころね、僕も演劇やってて、彼の噂はよく聞いていたから。彼、東大だったけど」
意外な発言に俺はちょっぴりのけぞりたい。オッサン、早稲田か、演劇青年だったか・・・みえないなあ。
今一度オッサンの風貌をなめるようにみてみたい。
オッサン、腹でてる。二重あご。バーコードハゲ。耳毛たくさん。
それでもって、オッサン、イッセー尾形が東大って、そりゃおかしいぜ。イッセーさんは違うよ、苦労人なんだよあの人は、なんにもわかっちゃいねえ、と心の中でつぶやきたい。
そして、東大といえば…野田秀樹、とすぐ頭に浮かべたい。
でも、そりゃないよなあ。つかこうへいとか言ってるし。無茶苦茶だ。
いよいよ混乱してきたので、オッサンにはさらなるヒントを与えていただきたい。
「ムーミン舎とかいったっけ、彼の劇団」ぷぷぷぷぷ。ムーミンって。フィンランドのカバ妖怪か、と、心の中で突っ込みをいれたい。
ようやくオッサンがイッセー尾形と野田秀樹を勘違いしてることがわかった。
まったく、むかし演劇やってたとは、笑わせるぜ、オッサンよお。
あんたはエセだ。あんた元エセ演劇青年だ。イッセー尾形と野田秀樹を間違えるなんてそうとうなエセさだ。
あんた、エッセー尾形だ。(そう心の中で言い放った自分のあんまりなダジャレに心の中で悶絶したい。)
携帯画面で時間を確認したい。もう5時かあ、なんてひとりごちたい。
席を立ち、オッサンに向かって「それ、野田秀樹じゃないですか」と口を挟みたい気持ちを抑えてカウンターのママさんのところへ歩み寄りたい。
「お勘定おねがいします」「あ、はい」
前もって小銭で用意していた450円を払って店をあとにしたい。
「ごちそうさま」の一言も忘れたくない。
それから夕暮れの街を歩きたい。(フィッシュマンズでいうと)歌うように歩きたい。
途中、酒屋が中途半端にコンビニ化したような店でお惣菜とビールを買いたい。
うちに帰ってそれで一杯やりたい。首筋にうっすらかいた汗で初夏を感じたい。
そのうちに睡魔に優しくゆっくりとおそわれたい。ベッドに横たわりたい。糊のきいたシーツの匂いをかぎたい。
そして、(邦画のタイトルでいうと)夢みるように眠りたいのである。

はい。また無駄話がすぎてしまいましたね。
いやはや、まったく我ながら妄想たくましい。病気だねこれは。
(書き終わって寝ちゃっていま起きて上の文章見直して自分で自分に感心しました。)
しかし、おかしいな。本当は例の回想の続きを書きたかったのに。
畜生。残念。こんなはずじゃなかった。
でも今回はこれでおしまい。もう書けません。
というわけで、また次回に。
ではでは。

yujing

投稿者 hospital : 2005年05月08日 20:21