« さちこ、社会派になろう | メイン | 性分 »

2005年12月18日

日曜日の夜

近頃、髪の毛を自分で切るようになった。

中国に来てから何回か床屋へ行ったけど、
どんなに注意しても、その度にしっかり刈り上げられるから
しょうがなく自分で切るようになった。

今日、髪を切りながら高校の時よく行っていた美容院のことをふと思い出した。
ちょっと変わったおばさんが一人で経営している美容院で、
それは白い家だった。
通っていた高校の辺りはほとんど田んぼと小さな商店くらいしかなかったので
その白い家は少しその場所に合わないような気がした。
そのおばさんはその家に自分の母親と二人で住んでいるようだった。
そして、昼間はその家の一角で美容院として開業していた。

どういうわけか、その美容院へ通うようになって、
どういうわけか、ものすごくその美容院が気に入ってしまった。
たぶん、あのオバサンが、髪を切る技術に熱中していたからじゃないかと思う。
そして、少し変わったポリシーのようなものを持っていたからだと思う。
それがだんだん、おかしな雰囲気を帯びたものに変わってきたのだけど
それに気づいたのは、もう大学に通い始めて、その美容院へ行かなくなってからだった。

当時、よく一緒にその美容院へ行っていた友人の一人が今もその美容院に通い続けている。
この間、彼と会った時に、
「そろそろ違うところ行けばいいのに。あのオバサンおかしいでしょ」
と言ったのだけど、彼はどうも変えるつもりはないらしい。
「まあたまにしか行かないし」
と言っていた。
けれど、何年か前も同じ質問をした時、彼は
「一度通い始めた所を変えるのが嫌だ」と、そんな内容のことを言っていた気がする。
彼もそのオバサンに負けずとても変わった人だけど、
そういう一途な部分を持っている。
今日、お風呂で自分の髪を切ってシャワーで流している時に、
「だからいいんだよなぁ」
としみじみ思った。

どうもそういう思い出が心の中に残っていて、
最近、一度通い始めた所には足しげく通うようになった。
毎朝、会社に着く前に、小さなパン屋に寄ってそこでパンを買っている。
お昼には会社の近くのCD屋へ毎日行ってその後は本屋へ行く。
このCD屋は、すごく小さな店だけど、どういうわけか本物のCDが安く売っている。
本当に本物なのかとずっと疑っていたけど、どう見ても聴いても本物にしか思えなかった。
だけど、日本の3分の1くらいの値段で売っているので
どうしてだろうとずっと考えていた。
最近、それがサンプル品であることがわかった。
日本やヨーロッパのサンプル品を安く買い取ってくるらしい。

そして、この本屋もすごく小さな店だけど、建築の本専門の店で、
どういうわけか日本の建築雑誌やヨーロッパの建築雑誌まで売っている。
中国の本は売っていない。
そして、この本も日本より安い。
ちょくちょく買うようになったら、それに合わせて最近値段が上がってきたような気がする。
だけど、ここの店員もすごくいい人達なので毎日通ってたまには買うようにしている。

それとは別に、たまに会社に直接ダンボールをかついて本を売りに来る男がいる。
どう考えてもアル中のような目をした男が
「ハロー」と言って突然現れてダンボールの中から建築の本を取り出す。
これも、ヨーロッパや日本の本だ。
基本的に建築の本は高い。
けど、この本はだいたい日本の5分の一くらいの値段だ。
しかし、疑いの目で眺めてみたらこれは偽物だということがわかった。
偽物と言ってもしっかり真剣にコピーしてあるので安ければいいという気がする。
「すごいね。まったく一緒だよ」
とその男に言うと、彼は
「そうだろう。まったく一緒だろう」
と誇らしげに言った。
考えてみると、本の偽物って一体何なんだろうという気がしてきた。

どっちにしても安いものにはそれなりの理由があると最近やっとわかってきた。
ほんとに物事にはしっかり理由があると最近思う。

年末なのにどうも年末という気がしない。
オレは一人の正月が結構好きだ。
今年はそうなりそうだ。

uematsu

投稿者 hospital : 2005年12月18日 23:43